最終年度は、地域ブランドの焦点を「日本ワイン」に絞り、消費市場の実態と、それを踏まえた地域ブランドとしての、地域ワイナリーの経営のあり方について考察した。国税庁告示平成27年の通達によって、酒税法上、日本で作られたぶどうを使って、日本で醸造されたもののみ「日本ワイン」と称することができることに変わった。ここから日本ワインが各地域の「地域ブランド」となる可能性がでてきた。 そこで、日本ワインの市場(生産、消費)を把握した。(1)生産については、専門雑誌、書籍、業界資料から推計した。(2)消費市場については、インターネット調査をおこなった(楽天リサーチのパネル600名に対しての、質問票調査)。 (1)の日本ワインの生産市場は、162万ケース(約2000万本)と推計された。この生産は、①大手ワイナリー(サントリーなど、計1000万本)、②地域の中堅、老舗ワイナリー(十勝ワインなど、計500万本)、地域の小規模、個人ワイナリー(500万本)と推定される。このことから、日本ワインの生産量のうち約25%が、地域の小規模、個人ワイナリーで作られていることがわかる。②と③を合わせて250億円(単価2500円として)となる。これをレストラン、宿泊(ワインツーリズム)などと関連させると、2500~5000億円になる。この規模の経済効果が生まれれば、地域の活性化は現実的なものとなる。 そこで、地域のワイナリーに対する消費者の認知を調査した(「聞いたことがある」の割合)。結果、①の大手ワイナリーの認知度は高い(80~90%)ものの、②については約30~40%、③については5-8%であることがわかった。今後の課題は、②と③の認知度をいかにして上げていくかということであることである。一つの方法は、個々のワイナリーではなく、地域のクワインクラスター(すなわち地域ブランド)としての認知を獲得することである。
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