研究課題/領域番号 |
24530527
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
熊倉 広志 中央大学, 商学部, 教授 (10337826)
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キーワード | 消費者行動の周期的変化 / 考慮集合 / コスト・ベネフィット・アプローチ / ミクロ・マクロ・ループ |
研究概要 |
ここでは、考慮集合(消費者の意思決定に際して、最終的な選択対象となるブランドの集合)に含まれるブランド数(考慮集合のサイズ)が、時間経過に従い周期的に増減する現象を指摘した後、そのメカニズムを考察する。具体的には、(A)コスト・ベネフィット・アプローチにより、個人の内的変化(考慮集合の変化)を考察し、(B)ミクロ・マクロ・ループに注目し、消費者(ミクロ構成員)の考慮集合の変化による市場(マクロ・システム)の変化(ミクロからマクロへ)、同時に、市場の変化による考慮集合の変化(マクロからミクロへ)を考える。すなわち、個人の意思決定が他者や市場に影響を与え、さらに自身に影響を与えることにより、自身の行動を周期的に変化させると考える。 平成24年度において、パッケージ財市場から得られたデータを用いて、考慮集合のサイズが周期的に振動する現象を示したこと、また、コスト・ベネフィット・アプローチおよびミクロ・マクロ・ループに依拠した概念モデルを構築したことを受け、平成25年度では、市場をマクロ・システム、消費者・企業をミクロ構成員と捉えたエージェント・ベース・シミュレーション・モデル(ABSモデル)を構築した。そして、計算機実験により、ABSモデルから観察データに合致するデータを生成させた。このとき、生成データは観察データに概ね一致したものの、必ずしも十分とは言えなかった。そこで、今後は、データのクリーニングとモデルのチューニングを実施する予定である。これにより、周期的変動をより的確に把握できること、観察データにより合致したシミュレーション・データを生成できることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展しているとした理由は、当初計画である(1)ABSモデルを構築すること、(2)計算機実験により、ABSモデルからシミュレーション・データを生成することを概ね実現できたことによる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度においては、観察結果および概念モデルに依拠して、ABSモデルを実装した後、計算機実験により観察データに合致するシミュレーション・データを生成することを試みた。生成データは概ね観察データに一致したものの、必ずしも十分とは言い難かった。そこで、平成26年度においては、観察データのさらなるスクリーニングとABSモデルのチューニングを試みる。もし、ABSモデルから観察データに合致するデータを生成できるならば、当該モデルは考慮集合のサイズが周期的に変動するメカニズム(のひとつ)を示していることになる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究経費の節約に努めたことに加え、日程上の問題などにより当初予定していた国際会議に参加できなかったことなどにより、当初計画より費消した研究費が少額であった。 平成26年度においては、観察データをさらに精査すると共に、ABSモデルのチューニングを行う。そして、成果を学会等にて発表・議論したい。このとき、データ整理及びプログラム修正のため、作成補助・修正補助・実行補助のための若干の人件費・謝金が発生するかもしれない。さらに、国内および海外での学会発表や打ち合わせのための旅費が発生する。なお、宿泊費・日当等は、国内外とも大学が定める基準に依拠する。
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