研究課題/領域番号 |
24530528
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
川野 訓志 専修大学, 商学部, 教授 (20244460)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 出店規制 / 中規模店 / 地方自治体 / 政府間関係 / 九州地方 |
研究実績の概要 |
九州地方の全ての県で出店規制が実施されていたことに着目し、九州各県における出店規制の制定過程およびその後の動向に関し調査を進めた。その結果、次のようなことが分かってきた。 熊本県で最初に県議会議員提案による出店規制条例が制定される。その背景には、県当局が出店規制に消極的であったことに加え、ダイエー熊本市出店を巡り激しい紛争が行われたことがあるものと思われる。熊本県条例の影響は、初めての県レベルの条例でありしかも罰則付きで強制力が強かったことから、全国的に出店規制が波及していくことになる。熊本県は九州地方の中心部にあり他の県と境界を接していることから他県へと波及していくこととなる。 熊本県での条例制定を受けて、九州の他県で出店規制の動きが始まるが、基本的に大・中規模店の出店の程度が著しい県ほど早くなっている。つまり大分県、宮崎県、福岡県、長崎県、鹿児島県、佐賀県の順である。 最後の佐賀県の場合、県当局は他県と同様に出店指導要綱制定を検討していたものの大型店出店を巡る紛争が比較的少ないこともあり九州知事会で本件を議題として提案するなど政策決定にかなりの逡巡が見られた。その間にも出店が相次いでいた武雄市、大町町が中規模店規制条例を制定し、また商工会連合会が条例制定を強く働きかけるといった動きを受けて、県議会議員提案による県レベルの出店規制条例が成立することになる。 都市部での大規模店出店を巡る紛争は耳目を集めやすいが、零細な小売業者の多い農村部での大・中規模店進出は深刻な影響を与えたものと思われる。1970年代後半には農協や生協の店舗を含むスーパーが郊外部や農村部に進出を始めた時期であった。このため、むしろ郊外部や農村部での出店規制を望む声が強まり基礎自治体はこうした声を無視することもできず、出店規制に踏み切り、これが中間自治体を突き動かすという政府間の政策伝播が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
九州地方に限定して精力的な調査を進めた結果、平成24年度に生じた研究の遅れはほぼ取り返せているものと思われる。予算執行についてもほぼ順調に消化されるようになっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、大分県、福岡県、長崎県等の追加的調査を実施するとともに、比較対象として東京都、神奈川県など南関東での調査を合わせることで、地方自治体による出店規制に関して都市部と農村部とでの政策形成の違いが分析されるものと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成24年度の研究の遅れを取り戻すべく、平成27年度は精力的に調査を行ったものの力及ばず次年度への繰り越しが出てしまったものである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年分と合わせ、より丹念な調査を行うことで予算を期限内に有効に執行したいと考えている。
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