研究課題/領域番号 |
24530531
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
小嶌 正稔 東洋大学, 経営学部, 教授 (40215257)
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キーワード | 石油流通システム / 次世代自動車 / 電気自動車 / 充電インフラ / 燃料電池車 / 石油販売業 |
研究概要 |
平成25年度は、24年度に引き続き、①次世代自動車の影響を含む石油製品需要(揮発油)の減少が石油流通システムに与える影響を調査・研究し、②次世代エネルギーの自動車用エネルギーの主役とされる電気と水素の流通インフラの整備とターゲットセグメントの調査・研究を行ったほか、平成25年度からは、③電気自動車の普及と石油流通システムに影響を与える新しい車の利用方法であるカーシェアリングなどについて調査研究を開始した。国際比較としては、24年度のフランス、英国に加えて、カナダのインフラ整備についての現地調査を実施した。 ①については石油流通システムに影響を与える三大要因である次世代自動車の需要予測、交通流対策について総合エネルギー調査会の予測データの検証を行った。特に次世代自動車の中心となる電気自動車の普及予測とその障害要因の分析を実施した。この24年度、25年度の①に関する成果として『経営力創成研究』に論文「次世代自動車の普及と石油流通システムの変質」を発表した。 ②については、神奈川県横浜市などの高充電整備地区における意識と東京横浜間、東京-名古屋間における充電設備の普及状況と消費者意識に関する実証実験を実施した。その結果、充電設備が整備されればされるほど、充電設備の利用が減少するなどの結果を得た。また水素燃料については、とよたエコフルタウンなどでのヒアリング調査を実施した。 ③については、カーシェアリングと次世代自動車を組み合わせたカーシェアリングシステムであるバンクーバーの状況の調査等を行った。またカーシェアリングの普及状況と次世代車との関係についての調査・研究を実施した。 平成25年度の研究では需要量の減少と次世代自動車を取り上げたが、実際の需要減が次世代自動車というよりもハイブリッドなどの現世代自動車を中心に起こってきていることから需要予測の調整が必要であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電気自動車の普及を支える充電供給網の整備状況を国際比較を含めておこなったこと、わが国では車使用の中心形態とされていない電気自動車のカーシェアリングのシステムを、実証実験が行われているバンクーバーにおいて現地調査したこと、そして24年度から調査・研究してきた需要の減少の要因別、需要減についての研究を論文にまとめ報告することができた。 また移行期の石油流通システムの課題であるガソリンスタンド過疎地の課題、移行期における緊急時対策についても、資源エネルギー庁の調査への参画、緊急時対策に対する具体的検証、東京都および各地の石油商業組合などとの意見交換・現状調査を実施することができた。 しかしながら過疎地対策については机上の分析と(東京での)ヒアリングに留まったことから、現状分析に成果が留まっていることは次年度の課題として残った。また同様に次世代エネルギーへの移行期における石油販売業者の業態模索や石油流通システムの公正で透明な価格を含めた取引制度のわが国への適応についても、事例を積み上げる段階(調査段階)であり、次年度の課題としたことが、この達成度をおおむね順調に推移しているとした理由である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、この3カ年のまとめとして。次世代自動車など需要減少が次世代のエネルギー供給システムにどのような影響を与えるのかの結論を出したい。具体的には、需要減少予測の比率の高低のケースによってどのようにシステムの変革が必要となるのか、その変革の前提条件と変革後の両者の関係の変化、移行期において流通システムの健全性を維持するための元売・販売業者間の関係について、取引契約、商標使用権契約を含めて調査・研究する。また石油 流通システムの変化をもたらす、元売会社と販売業者の関係が移行期において、どのように展開するのか、需要の減少と競争の激化が取引における公正・透明な関係を構築する契機になるのかなどについて、ヒアリング・現地調査などによって示す。また電気自動車の普及の妨げになっている車に対する消費者意識の慣性についても、マスコミの対応を含めて調査・研究する。 さらに石油流通システムにおけるソーシャルロジステックスの確保については、スエーデン、ノルウェイなどで行われている過疎化への対応策を文献調査によってまとめ,わが国における政策的展開までを考える。 そして需要減少要因として残った、交通流対策、新消費者選択であるカーシェアリングなどについては、もっとも普及しているスイス・ドイツを含めた市場環境調査の実施が必要であると考える。
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