研究課題/領域番号 |
24530536
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
江澤 雅彦 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (80185115)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 共済のアイデンティティ / 員外利用規制 / 県域規制 |
研究概要 |
研究期間初年度の平成24年度は、本研究課題の学問的な枠組みについて検討・確認を行った。そして共済事業と保険事業を分けるメルクマールを、組合員の共済団体への「運営・参加」という関係性に求め、その関係性を考える手掛かりとして2つの論点を取り上げた。 第1の論点は、組合員と共済団体の関係の「例外」に該当する「員外利用規制」の問題である。消費生活協同組合法は、原則として員外利用を禁止しているのに対し、農業協同組合法および中小企業協同組合法では、組合員の利用分量の2割を超えない範囲で組合員以外の組合利用を認めている。これは、2割の範囲内であれば、出資・事業利用・運営という三位一体原則に影響を与えないと考えられているためである。ただ、そもそも2割という数字に客観的根拠は見当たらず、生協共済団体が、他の法規との「イコール・フッティング」を根拠に員外利用解禁を求めるのは、「自己否定」に繋がる恐れありと考える。 第2の論点は、生協、とりわけ地域生協は都道府県区域を越えて設立できないこととなっている。すなわち県域規制の問題である。研究代表者は複数生協と連合会が共存する現状は、1つの生協である場合と比べ、組織数が多い分、コストが余分にかかることになる。したがって、県域制限をなくし組織を一本化することにより、組織をスリム化して組合員還元をさらに拡大するためにも、全国またはブロックに分けた組織による出資金管理事務の効率化などによる運営組織削減を目指す必要がある。もちろん、「区切られた領域内ではじめてお互い顔のみえる「相互扶助」が実現できる」という反論も想定される。しかしながらむしろ、ここでは生協はあくまで1つの「器」と割り切って、重要なことは、当該団体とその構成員である組合員の関係を実質的なものにすることである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共済=協同組合保険のアイデンティティを探索し、保険と共済の境界―がもしあるとすれば、それ―を明らかにしようとする本研究課題を進めるに際し、共済団体間の相違も確認しておく必要がある。平成24年度に取り上げた「員外利用規制」は、農協法と生協法の間に差異が存在する。 研究代表者は、生協共済団体が、農協共済との「イコール・フッティング」を求めて、員外利用解禁を求めるのは、「アイデンティティ・クライシス」を促進するものと考え、必ずしも是としないとの結論を出した。 以上、平成24年度において、研究目的を一部果し得たと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、共済団体の「アイデンティティ構築のための共済団体と組合員との情報授受=コミュニケーション」を研究する。 具体的な制度としては、第1に、「共済組合員への契約推進の枠を超えた共済・保険に関する幅広い学習機会の提供」として展開される、職員と組合の協力の下で、保険の見直し、生活保障設計に関する教育活動の実態を調査する。 第2に、「契約者からの意見反映を通じた「間接的自治」の実現」のために行われている、契約者と共済団体のコミュニケーションの状況を調査する。共済運営、共済商品開発・改善のために、組合員の意見吸収・反映の仕組みがどのように構築されて、どの程度効率的に運用されているかを評価したい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題の関連図書購入、文献複写、インタビュー等させていただいた関係者への謝金として使用したい。
|