研究代表者は保険研究者として「保険と共済の違い」について検討している。ここでは生協共済に限定して、「生協共済と組合員参加」について考察した。なぜなら、それが、(株式会社・相互会社による)保険と共済を分ける「境界」になりうると考えるからである。 ただし、何を「組合員の参加」と称するか、特段の定義は見当たらない。例えば明治大学の押尾教授によれば、「協同組合・共済は言うまでもなく組合員主権が確立された組織である。民主的な運営原則の下に、組合員は出資・運営・利用において『参加』する」とされている。数百円の出資金を支払い、定期的な掛け金支払いは銀行口座から引き落とされ、年に1度の総会(総代会)の決算報告を目にして、必要に応じて共済金の請求・受取りを行う。こうしたことを「参加」と称して保険との違いを主張しても説得力は乏しい。 研究代表者は、共済団体の実態面から見て、2つの取組みを紹介した。 第1が、「組合員の契約推進の枠を超えた共済・保険に関する幅広い学習機会の提供」である。たとえば全労済は「生活保障プランナー」、コープ共済連は、「ライフプラン・アドバイザー」といった独自の資格を設け、当該資格を保持する組合員が、他の組合員に対し、生活保障全般、税金、金融等に関する啓蒙を行うという形をとっている。 第2が「共済契約者からの意見反映を通じた間接的自治の実現確保」である。生協共済の契約者は自らの意見が、頻繁かつ迅速に共済運営や共済契約の内容に反映されてはじめて、生協共済の「民主的運営」を実感すると考えられる。そうした意味では、組合員の意見吸収・反映の仕組みの完成度が、そのまま「共済らしさ」の尺度の成ると考えられる。
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