本研究では消費社会化理論を援用し、家計の金融資産選択行動について定量的・定性的双方向からの説明を試みた。消費の社会化という概念では、消費者行動はその置かれている歴史的・社会経済的・文化的コンテキストのもとにモデル化され、消費者が自身の環境に適応するための知識や技能、指向を取得してゆく過程の研究をさす。本研究では、金融資産選択能力を示す金融リテラシーについて、この消費の社会化の概念を援用し欧米の家計と比較を行った。諸外国の消費者の金融リテラシーの水準について基本的な知識を問う標準化された質問(金利・インフレ・リスク多様性)を用いて国ごとの正答率を比較した2次データをまとめた結果、ドイツやスイスでは全問正答率が高く50%を超えているが、アメリカやフランスは30%程度で、日本はそれを下回る27.0%となっている。特にリスク多様性に関する質問では、欧米各国の正答率がおおむね50%を超えていることに対して、日本は正答率が39.5%と低く、「わからない」と回答した割合は56.1%と突出して高い。しかし、ドイツはどの問題の正答率もアメリカより高いが家計の金融資産における株式保有率は15%程度で アメリカと比して低く、これらの実証結果からは金融リテラシーの高さとリスク性資産の選好の関係は不明確であることが示された。
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