本研究は、わが国企業の業績測定システムに関して、①業績指標をどのように利用しているのか、および、②どのように業績指標を利用すればどのような成果を得るのか、の2点について実証的に明らかにすることを目的としている。本年度もまた、前年度に引き続いて、先行研究のレビューを継続的に実施しながら、事例研究を本格的に展開することを通じて、理論的枠組みおよび仮説命題の精緻化を進めた。 研究実績としては、共著にて、「顧客満足向上を通じた財務成果獲得のためのマネジメントに関する研究―星野リゾートの事例を通じて―」を執筆している。同論文は、査読の結果、学会誌である『管理会計学』に掲載された。 同論文では、先行研究において、顧客満足と財務成果との関係は必ずしも明らかになっていないことから、実務において顧客満足度と財務成果との関係がどのように捉えられているのか、かつ、顧客満足の向上および財務成果の獲得がどのようにマネジメントされているのかについて、顧客満足経営に組織的に取り組んでいる株式会社星野リゾートの事例を通じて考察している。考察の結果として、まず、同社では、顧客満足を向上すれば利益の増加につながることを基本認識としながらも、現時点において、顧客満足度と財務成果との因果関係のメカニズムを必ずしも十分に把握できていないことを示した。ただし、同社は、顧客満足度と財務成果との因果関係が不明確な状況にあっても、マネジメント・コントロール・パッケージの下で、顧客満足向上および利益増加の同時達成に向けてまい進していることもまた明らかにしている。
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