研究課題/領域番号 |
24530550
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
高橋 賢 横浜国立大学, 国際社会科学研究院, 教授 (50282439)
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キーワード | 産業クラスター / バランス・スコアカード / 戦略マップ / コーディネーター / 食料産業クラスター協議会 |
研究概要 |
平成25年度は,主に食料産業クラスターに焦点を当てて研究を行った。 第1の成果は,食料産業クラスターにおけるバランス・スコアカードの適用可能性について検討したことである。複数の事業体が一つのネットワーク組織として活動している産業クラスターについては,ビジョンや戦略の理解や共有をすることが非常に難しい。そのため,クラスターを単位としたバランス・スコアカードやそれに基づく戦略マップを作成することで,ビジョンと戦略の共有を図るシステムの構築を提案した。その際,参加者の間には階層構造があることが明らかとなったので,マップの作成にあたっては,戦略カスケードマップを作成することが有用であることがわかった。 第2の成果は,農林水産省における食料産業クラスター政策の問題点を明らかにしたことである。この政策は,法律に基づかない予算事業・補助事業であり,単なる補助金のばらまきとなってしまった感がある。特に,政策を進める上で推進役となるべく各地で結成された食料産業クラスター協議会が,本来の機能を果たすことなく単なる補助金の受け皿と化していた事例が多く見られた。協議会の設立にあたって,別の組織から発展的に協議会となったものについてはこういう傾向は見られなかったが,補助金獲得を目的として形成された協議会では顕著な傾向として見受けられた。また,多くのクラスター協議会では,コーディネーターの育成と活用に問題があることも明らかになった。 第3の成果は,成功している事例を元にして,地域で食料産業クラスターを形成するための可能性を探ったことである。具体的には,成功している熊本と大分の事例を元に,りんごというキラーコンテンツがありながら事業化が成功していない青森県ではどのようにすれば経済的に自立できるクラスター形成が出来るのかを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度の研究により,食料産業クラスター協議会の実態とその問題点が明らかになったこと,導入すべき管理会計手法(バランス・スコアカード,戦略マップ)が明らかになった。特に,産業クラスターに関しては国の政策の評価が必要になるが,農林水産省による一連の食料産業クラスター政策の推移とその問題点を明らかにすることが出来た。また,成功事例から,食料産業クラスターを地域で展開させるための提言を,著書の刊行という形で具体的に行うことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの研究成果を踏まえ,本年度は,食料産業クラスターに対象を絞り,成功事例のネットワーク組織としての特性の分析を進める。引き続き,インタビュー調査を行い,また,大規模なアンケート調査も行う。 また,クラスターに対する具体的な管理会計システムの設計を行う。管理会計システムとしては,バランス・スコアカードと戦略マップ,サプライチェーン管理会計の設計を行う。可能であれば,設計したシステムの導入研究も行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
大学独自の経費を活用したことにより,当初計画よりも科学研究費による調査出張が大きく減少したことによる。 平成26年度は,さらに国内調査を進めていくために国内出張を計画している。また,海外の事例との比較研究のため,海外出張も計画している。
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