アジア地域を中心に海外子会社と親会社間のマネジメント・コントロール・システムについて、海外子会社の組織特性と情報システムの適合性について、これまでの研究で調査した。結論としては、必ずしも本社からの統一的な業績評価システムや情報システムが適用されているわけではなく、子会社の組織特性に適合した業績評価および情報システム選択の自由度が高いことが観察された。 日本企業グループの供給連鎖を基軸に、他社との事業連携等のアライアンスが東南アジア地域などの広範囲にわたって計画されると、海外子会社においてこれまで実施されてきた個別的な業績評価システムに代わり、統合的な事業評価システムが必要とされる。この観点から、海外事業戦略およびこれを支援するグローバルな事業評価システムおよび情報システム構築の可能性について、インデプス・インタビューによる実証研究を実施した。 本調査は日本の代表的なグローバル企業X社における加工組立部門のタイランド現地子会社Xsとイギリスの代表的なグローバル企業Y社における素材加工部門のオーストラリア子会社Ysについて、本社及び現地子会社の双方に業績評価システム、その評価要素、情報システムの特性等についてインタビューを実施した。 研究の成果として、日本企業グループの業績評価システムは現地特性と製品に大きく依存しすることが確認された。日本及び中国向き等の製品・部品は原価削減と現地子会社全体のROI等の財務指標が重要視され、現地での新規事業については収支バランスがとれていることが必須である。一方、オーストラリアでの現地企業は製品特性上、工場及び従業員の安全管理及びキャッシュフローの安定性が同じレベルで業績評価基準とされていることが特徴として捉えられた。
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