研究実績の概要 |
本研究は,わが国の中小企業が戦略の策定/実行を効果的に行うためのKPI(重要業績指標)を活用したマネジメントに関するフレームワークを構築することを目的としている。 本年度の研究では、KPIマネジメントに関する中小企業へのインプリケーションを導き出すため,一昨年度に実施したアンケート調査(全上場企業3,547社に送付し268通回収)について規模別の分析を試みた。すなわち,中小企業基本法における中小企業の従業員数に関わる定義「常時使用する従業員の数が300人以下の会社」に基づき,回答企業を従業員数が「300人未満」の企業(67社)と「300人以上」の企業(200社)に区分し,両回答企業の比較分析を行った。 KPIを導入している企業は,「300人未満」で24社35.8%,「300人以上」で103社51.5%であった。KPIの設定目的に関しては,いずれの項目においても「300人未満」の方が重視する度合いが低い結果となったが,重視する項目に目立った相違はなかった。一方,KPIの活用効果に関しては,「産業(業界)内での成功を決定づける要因の識別」や「戦略実行の進捗状況の確認」等の項目において,「300人未満」の方がより導入効果を感じていることが明らかとなった。 これまでの研究において,KPIには「戦略実行型」と「早期警報型」の2つの機能があることを指摘してきたが,今後のKPIの活用目的についての回答結果を比較すると,「300人未満」では「戦略実行型」の目的をより重視するのに対し,「300人以上」では「早期警報型」の目的をより重視する傾向があることがわかる。したがって,中小企業においては「戦略実行型」に重点をおいたKPIの活用を図る一方,規模の大きい企業においては,KPIの「早期警報型」の機能を取り入れたマネジメント・システムの活用を図ることが効果的となる可能性があることを明らかにした。
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