現行の企業実務で実践され、また会計学の基本テキストで取り上げられるCVP分析は、原価と収益の関係性が固定的かつ確定的な状況にあることを前提とした事後的分析手法である。一方1980年代まで、原価ないし収益を確率変数とする不確実性下における静学的CVP分析に関するいくつかの研究成果が公表されてきた。これに対して本研究では、収益を確率過程(確率変数の時系列)とおくことにより従来のCVP分析を動学的分析モデルに拡張した。さらに原価については、近年の実証会計研究で報告されている「原価態様の非対称性」を仮定することで、CVP分析をさらにオプションベースの動学的確率モデルとして拡張的に定式化した。
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