本研究課題は,戦間期から戦後直後までの日本を対象として会計が果たした役割を把握する事を目的とした。政府による経済統制が広範囲に及ぶ中で,企業会計に対する規制は上から下への一方的なものであるというのが常識的な見解であった。しかし,本研究課題では,軍部が要求する原価計算機構が企業にとって不適切であるとき,企業は自社の記録の正当性を主張し,軍もそれを認めたことを明かとした。事例に基づく研究ではあるが,企業会計は,制度が一律に規定する固定的なものではなく,しばしば交渉により変更が認められる緩やかなものであることが示された。
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