研究課題/領域番号 |
24530561
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
西谷 公孝 神戸大学, 経済経営研究所, 准教授 (30549746)
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研究分担者 |
國部 克彦 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (70225407)
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キーワード | 環境情報開示 / 環境への取り組み / 環境パフォーマンス / 経済パフォーマンス / 実証分析 |
研究概要 |
文献レビュー:昨年度に引き続き企業の環境への取り組みと経済パフォーマンスや環境情報開示に関する理論的・実証的研究の文献レビューを進めた。特に、開示される環境情報の質に焦点を当てることに意義があると考え、環境報告書に添付する第三者保証や第三者意見といった第三者評価についてのレビューを重点的に行った。 意見交換:本研究の分析枠組みの中に第三者評価の役割を考慮するに当たり、日本企業が公表する環境報告書における第三者評価の意義をこれまで研究してきた関西学院大学のM.Bハイダー准教授と研究プランについて意見交換を行った。 データ入手:研究対象となる東京証券取引所第一部上場企業の環境情報開示の量に関する2008-2011年のデータおよび環境情報開示の質に関する2006-2010年のデータを入手した。 実証分析:企業の自主的な環境への取り組みの代理変数として環境マネジメントシステムの実施が経済パフォーマンスの一つである株主価値に与える影響について、環境情報開示の量の役割に着目して実証分析を行った。また、同時に環境情報開示の質の役割に着目した実証分析も行った。いずれの分析でも経済パフォーマンスの向上という点からは、企業は環境に取り組んでいるだけでは不十分で、環境への取り組みについての情報を積極的に開示することが重要となってくることを示唆している。また、企業のフォーマンスと環境報告書での記述表現の関係についても追加的な分析を行った。その結果、環境パフォーマンスの悪い企業の方がより楽観的な記述表現を用いる傾向があることが明らかとなり、このことは環境情報開示には読者をミスリードする可能性があることを示唆していることから環境情報開示、特にその質の役割についての新たな知見をもたらしている。なお、これらの結果はディスカッションペーパーおよびジャーナルにおいて公表されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目的は、簡単な経済理論モデルに企業の環境パフォーマンスや環境情報開示データを当てはめて実証分析することによって、日本企業の環境への取り組みと経済パフォーマンスの関係だけでなく環境情報開示がその関係にもたらす役割を明らかにすることであるが、現時点での進捗状況は以下のとおりである。 経済理論モデルの作成:最終的に用いる経済理論モデルの作成はほぼ完成している。 環境への取り組みや環境情報開示に関する追加データの入手:これまでに入手したデータによっても実証分析は可能であるが、できるだけ長期にわたるデータを用いた方が実証分析の信頼性が向上するために、最新データを含めて追加データの入手を予定している。 実証分析の実施:最終的に融合する前に、重要なリサーチトピックに関して理論モデルなしで実証分析を行った結果、環境への取り組み、環境情報開示、経済パフォーマンス間のある程度の関係性が明らかになっており、理論と実証を統合させた分析結果が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに作成した理論モデルをもとに、入手したデータから代理変数を作成し実証分析を行う。そのためにデータを追加することに加え、個別の環境への取り組みや環境パフォーマンスについて理論モデルや実証分析の方法の微調整も行う。そして、分析結果が出たものから国内外の学会で報告する。また、それと並行して、ディスカッションペーパーにまとめたものを再構成し、海外査読付きジャーナルへ投稿する。
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次年度の研究費の使用計画 |
査読付きジャーナルに投稿する論文の英訳や英文校閲費用および開催を予定しているセミナー費用として最終年度に繰り越している。 ディスカッションペーパーとしてまとめてある研究を論文として新たに投稿、改訂する際の英訳や英文校閲費用として使用する。また、最終成果報告のためのセミナーを開催する際の費用として使用する。
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