本研究は公立大学の法人化と予算管理の変化について明らかにすることを目的とし、主として資料調査及び訪問調査を行うことにより、研究をすすめてきた。 公立大学は設置自治体の高等教育政策を反映し、主として地域における高等教育機会の保障のみならず、地域に根差した研究の拠点として、自治体からの予算配分を受け存立してきた。平成17年の地方独立行政法人制度の導入により、これまで自治体の一部局であった公立大学は、多くが公立大学法人として独立した法人格を持つ主体となった。同時に予算配分についても、自治体予算の一部から、運営費交付金システムが導入されることにより、大きな変化に直面した。 この変化は公立大学法人の予算編成および管理に少なからず影響を及ぼしている。公立大学法人制度導入以後に開学した大学については、運営費交付金の仕組みを前提とした予算編成および予算管理が導入されている一方、法人化以前から存在する公立大学においては、新しい制度の導入という点において対応が分かれている。可能な限り新たな制度に合わせようと、学内の予算編成や予算管理の在り方を変化させる大学がある一方、これまで行ってきた予算の編成・管理の在り方を可能な限り変化させることなく、新しい制度に適応させてゆこうとする大学もあり、法人化という外部制度環境の変化が、組織内部の在り方に変化を引き起こすパターンと、そうでないパターンに分かれることが明らかとなった。 このことは資源配分の制度の変化が、明らかに制度を変化させる要因として機能作用する一方で、これまで培われた組織文化が、制度がもたらす変化への圧力への対抗作用を持つという側面も明らかとなってきた。
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