研究課題/領域番号 |
24530569
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
中嶋 隆一 明海大学, 経済学部, 教授 (50217733)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | スイス会計 / FER / 国内会計基準 / OR / 国際会計 |
研究概要 |
本研究の目的は、日本と同様に中小企業が大多数(250名未満の会社約99%)を占めるスイスを中心に、新国内会計基準として構築されたFERが中小企業の財務報告とどのように関連し、影響を及ぼしているのか、さらには問題点の所在等を詳細に調査、分析し、そこで得た知見を、現在検討されている我が国(日本)の中小企業会計制度の今後の制度設計に貢献するべく研究することを目的とする。 上記の内容に関連する下記項目はすでに研究論文等で公表してきているが本研究では独自の基準体系をとる国内会計基準FERを研究対象の中心とし、いくつかの問題領域を設定した。現行のFERに関する個別問題として、本研究で掲げている主な検討領域はつぎのとおりである。①小企業と中企業の財務報告に実際に適用している債務法とFER会計基準の割合と理由②中小企業の財務報告に関する意義、FER適用による(資本コストを含めた)資金調達と財務報告との関連性③債務法適用企業とFER適用企業のメリット・デメリット(コスト・ベネフィットの面を含む)④企業規模別分類による会計基準の適用がもたらす効用⑤FERの規定内容の検討(ここでは最近公表されたFER41保険契約を含む;スイスは保険業で世界第2位の業績を示している)⑥SIX上場基準とFERとの関連性 以上の検討領域を3年間の研究期間の課題としているが、今年度は個別問題の②および、④を研究の対象として実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度中に、第1回目の現地調査を実施する予定であったが、本務校入試日程等の行事で時間的余裕がなく実施できなかった。今年度中には現地調査を実施する予定である。しかし、SIX証券取引所に上場している全企業(2013年2月末時点)282社については、インターネット上でアニュアルレポートを中心にすべてダウンロードできたので、2011年度または2012年度の上場別企業の会計報告に関する適用基準の分析が可能となった。また、チューリヒ大学IRC研究所時代の調査報告書により、中規模企業並びに中小企業の会計報告適用基準についての分析も可能となった。したがって、電子媒体並びに紙媒体による情報収集はできたので、H24年度に計画した研究は実地調査以外の資料収集は概ね達成できたといえる。BXベルン証券取引所データのうち、ネット上で収集可能な情報も収集済みであり、一部は分析が完了した。したがって、訪問インタビュー、現地での紙媒体による情報収集のみ残されている状況である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度に実施できなかった現地調査を実施する。調査方法:具体的には、SIXスイス証券取引所データ、BXベルン証券取引所データ、IBW研究所(InstitutfürBetribswirtschafts lehre-Accounting)データ等を収集・分析する。またFERとともに債務法、その他の国際基準の適用状況を企業規模別に分析すると同時に、応募者が過去に調査したデータとの比較により、スイス企業の適用基準の動向を(スイス)での資料収集を目的としている。そのため連携協力者(スイス銀行研究の専門家である明海大学・川村文子氏および在日スイス商工会議所会頭でスイス中小企業の実態に詳しいMartin Stricker氏))の現地での協力を仰ぎ調査にあたる。資料の収集方法は訪問インタビュー、紙媒体(書類)閲覧、インターネットによる情報収集とする。資料整理・分析作業に関しては大学院生・アシスタントの協力を得て進める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
スイス企業に影響を及ぼしていると考えられる近隣EU諸国(予定ではドイツ、オーストリア、オランダ、イタリア、フランス等)金融機関およびのスイスの金融機関について、資金調達方法を巡る資料収集を行い、同時に中小企業の財務報告の重要性に関する調査を実施する。また国内会計基準であるFERの適用度合の関連を分析する予定である。資料収集にあたっては、上記のEU諸国の代表的金融機関ならびにUBS, Credit Suisseといったスイス主要銀行、スイス銀行協会も訪れる予定である。その場合、連携協力者の協力を仰ぎながら関連機関を訪問する予定でいる。 財務報告の透明性問題に関連して、非上場中小企業の場合にはFERと比べ債務法の適用割合が高いとされる。資金調達の際には、あまり銀行への借入(間接金融)が希薄とされるが、現実はどうかを訪問機関の資料およびアンケート調査を実施して検証したい。その際、適用基準によって作成された財務報告の役割についての調査も同時に実施したい。分析にあたっては、収集したアンケート結果をもとに、統計的手法を用い、定量的・定性的に調査結果をまとめる。また、分析をおこなう際には、アシスタント等の協力により実施し、分類整理をおこなう。 現地調査にあたっては、FER41(保険契約)の規定内容の検討と関連し、可能ならば近隣諸国およびスイスの中小の医療経営の現場も視察したいと考えている。
|