本研究の目的は、スイス国内企業とりわけ中小企業を研究対象としている。2007年より新国内会計基準として構築されたFER(会計報告基準)が各企業の財務報告とどのように関連し、影響を及ぼしているかを調査・分析し、そこで得た知見を日本の中小企業会計の制度設計に貢献するべく研究することを目的としている。この目的を遂行するため、平成24年度から平成26年度まで、各年度の「研究実施計画」に照らして研究・調査を遂行してきた。以下は実施してきた研究成果の概要である。 平成24年度は①中小企業の財務報告に関する意義、FER適用による(資本コストを含めた)資金調達と財務報告との関連性、②企業規模別分類による会計基準の適用がもたらす効用を主な研究課題とし、文献資料、インターネット等を中心に研究成果を学会報告、論文等で公表した。平成25年度は前年度との2年間で実施予定であった実態調査を1年遅れで 実施した。スイスのチューリヒ大学とフランスのパリ大学を訪問し、資料収集と訪問インタビューを行っている。このうち、チューリヒ大学のIBW研究所ではProf.Dr.Conrad Meyer教授およびIBW研究所所長のProf. Dr. Dieter Phaff教授に再会し、スイス事情に関する貴重な意見を得ることができた。平成26年度も実態調査のため研究協力者とともにスイス・チューリヒのほか、EU本部、Euronext(ユーロネクスト)のパり、ブリュセル、アムステルダムの各証券取引所等を視察した。スイスでは上記のPhaff教授と再度意見交換を行った。また、この訪問では最近話題となっている統合報告と財務報告との関連性について、スイスのみならず、近隣諸国の状況も、企業報告にどのような影響が出ているかを知る上で、有意義な情報を得た。今後は2年間の実態調査結果踏まえ、研究成果を、順次学会報告・論文等で公表する予定である。
|