研究課題/領域番号 |
24530571
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
勝尾 裕子 学習院大学, 経済学部, 教授 (70327310)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 自己創設のれん / 利益測定 / ウィンドフォール |
研究実績の概要 |
平成26年度に実施した研究成果の具体的内容: 研究の全体的な構想は、会計利益がなぜ投資家の意思決定に有用なのか、その理論的根拠を明らかにすることにある。会計利益の有用性について実証的な観点から検証した研究結果は既に数多く示されているが、その有用性に関する理論的根拠については必ずしも明らかにされていない。本研究では、会計利益の特質の一つである自己創設のれんに着目し、それが利益の有用性に与える影響について、利益測定モデルを用いて理論的な観点から考察を加える。 平成26年度においては、会計利益における自己創設のれんの配分プロセスとウィンドフォールの配分プロセスとを比較することにより、経済的所得と会計利益の測定構造の相違を明らかにした。そのうえで、その結果に基づき、その他包括利益から純利益への組換え(リサイクリング)の理論的妥当性について検討を加える手掛かりを明らかにした。
平成26年度に実施した研究成果の意義及び重要性: 会計利益の測定構造におけるウィンドフォールの認識過程については、既に先行研究において十分に検討が行われているが、自己創設のれんの認識過程については未検討の領域であり、本研究は、その未解決の問題に取り組んでいる。会計利益の測定構造について、不確実性下に拡張してウィンドフォールと自己創設のれんの配分プロセスを比較することによって、経済的所得と会計利益の理論的相違を明らかにし、会計利益の基礎概念について新しい見地から検討することが可能となる。本研究では、会計利益の測定構造をウィンドフォールや自己創設のれんの配分プロセスの観点から考察することにより、包括利益と純利益の差額部分であるその他包括利益と会計利益の理論的相違を明らかにするとともに、その他包括利益から純利益へのリサイクリングの問題に一定の示唆を与えることを目的としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間において明らかにしようとする点は以下の3点である。 ①会計利益に含まれる自己創設のれんの配分額を利益測定モデルを用いて特定するプロセスを精緻化する。具体的には、ウィンドフォールが存在するような不確実性下におけるケースや配当額が変動するケースを検討し、これらの変数を考慮しても結果は変わらないことを示す。 ②自己創設のれんの配分・認識について、従来の会計理論ではどのように考えられてきたかについて、未検討の時代区分の議論を検討し、従来の考え方そのものも変容してきた可能性を示す。 ③自己創設のれんが財務報告の対象から排除されてきた理由について、従来と現在ではどのように異なるのか、あるいは異なるように見えてその基礎にある考え方は変化していないのかを検討する。自己創設のれんの議論を手掛かりに、財務会計の基礎概念の変容の可能性を示す。 平成25年度までの2年間の研究により、①についての検討結果が当初の予想と異なるものとなる見込みとなったため、平成26年度において、計画開始当初における計画を変更して①に関する検討を拡充することとしている。平成26年度における計画変更を受け、当該年度においては、主として①に関する検討を進めた。その結果、一定の成果が得られ、学会報告を行った。また、成果の一部については、海外査読誌(Accounting Horizons)に投稿して掲載された。 上記①に関する検討に注力することとしたため、②③については、当初予定されていた研究計画の達成度合よりもやや遅延しているが、これは研究の方向性を変更した結果であり、一方で、①の論点については、大幅に議論を拡充することができた。そのため、全体の研究目的達成の観点からは、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度までの2年間の研究の結果、当初の研究計画の目的のうち、上記①についての内容を特に拡充する必要性が生じたため、平成26年度から計画を変更している。平成27年度においても、①の論点に関する検討をさらに進めることとする。平成26年度において、会計利益に含まれる自己創設のれんの配分額を利益測定モデルを用いて特定するプロセスを精緻化することについては、一定の成果がみられたため、今後は、その他の包括利益から純利益へのリサイクリングに関する問題に取り組みたい。 具体的には、会計基準「概念フレームワーク」における、その他包括利益から当期純利益へのリサイクリングを行う規準について、国際会計基準審議会の示した方法では問題があることを指摘するとともに、会計利益の計算構造に関する分析から導き出せる結果について、理論的に明らかにする。この問題については、経済的所得と会計利益の違いを変動所得を手掛かりに論じた先行研究ではウィンドフォールの認識過程に着目して検討されているが、本研究では、自己創設のれんの配分過程に着目し、不確実性下にモデルを拡張することにより、リサイクリングのタイミングや包括利益と純利益の理論的相違点について、一定のインプリケーションを得ることを目的とする。 平成27年度においては、当該年度中に実施した研究目的のうちの①の目的について得られた研究成果を、積極的に学会で報告を行うとともに、査読誌への投稿を行い、掲載をめざす。また、当初の研究目的のうち②および③については、全体計画の進捗を見極めながら、これまでに実施した研究に調整を加えることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度において、ウィンドフォールが生じる状況下における分析を実施し、その結果をもとに、自己創設のれんの配分過程との比較検討を行った。その結果について、当該年度における学会で報告を行う予定であったが、不確実性下における検討結果が、利益測定の基礎概念に関する検討結果に影響を及ぼす可能性が生じることが変更したため、計画を変更し、利益概念の基礎的な側面についても検討することとした。そのため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
上記理由のため、ウィンドフォールの配分過程と自己創設のれんの配分過程との関連について検討するとともに、その結果に基づいて利益の基礎概念に関する検討を行うこととする。それに関する成果の報告を次年度の学会において実施することとし、未使用額はその経費に充てることとする。
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