最終年度に実施した研究の成果: ウィンドフォールが生じる状況における分析に基づき、自己創設のれんの配分過程とそれとの比較検討を行った結果、不確実性下における検討結果が利益の基礎概念に関する検討に影響を及ぼす可能性があることが判明したため、当初の予定を変更して期間を延長し、最終年度において利益概念の基礎的な側面に関する検討を行った。最終年度における研究成果の意義は、確実性下だけでなく、不確実性下におけるウィンドフォールの認識と会計利益における自己創設のれんの配分との関係について、その内容を明らかにした点にある。
研究期間全体を通じて実施した研究の成果: 本研究の全体的な構想は、会計利益はなぜ投資家の意思決定に有用なのか、その理論的根拠を明らかにすることにある。会計利益の有用性については、実証的な観点から検証した研究結果は多く示されているが、理論的検討については必ずしも十分ではない。本研究では、会計利益の特質の一つである自己創設のれんに着目し、それが利益の有用性に与える影響について、利益測定モデルを用いて理論的な観点から考察を加えた。本研究により得られた成果としては、第一に、不確実性下における会計利益に含まれる自己創設のれんの配分額を特定した。具体的には、利益測定モデルを用いて自己創設のれんの配分プロセスを分析し、ウィンドフォールが存在するケースについて、その配分プロセスと自己創設のれんのそれとの相違を明らかにした。第二に、自己創設のれんの配分及び認識について、従来の見解について歴史的な観点から検討し、のれんの定義そのものが変容してきた可能性を示した。 本研究の意義は、会計利益が投資家の意思決定になぜ有用であるのかという問題について、利益測定モデルを用いて、利益測定の観点から会計利益の特質を理論的に検討することにより、その有用性の源泉となっている利益の特質を明らかにした点にある。
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