最終年度は、前年度に実施した質問票調査及びインタビュー調査に基いて学会報告を行い、論文を執筆した。サービス産業における価格コントロールを可能にした背景には、販売方法の劇的な変化が存在する。いわゆるWebエージェントの存在は価格の柔軟なコントロール、状況に応じた商品の出し入れを可能にし、様々なサービス商品のレベニューマネジメントを可能にした。しかし、その方法は単一ではない。その企業が直面している環境の違い、そしてマネジメントの力点の違いによって様々なコントロール方法が存在している。 本研究の最終年度ではその1つの例として、繁忙期と閑散期における収益管理実務の違いをマネジメントの視点から考察した。需要動向の違いはその企業が直面している典型的な環境要因である。その結果、繁忙期には「計画段階における需要予測の精緻化」および「実行段階における価格の適切な操作」が財務業績に正の影響を及ぼすという結果が得られた。適切な価格設定も重要であるがその段階で精緻な管理を行っても遅すぎるため、需要予測の段階でのマネジメントがより重要であることが示された。この点は時系列分析や顧客セグメント別の分析などを通じた需要予測が重要であることを示している。キャパシティが制約されている典型的なサービス業においては、繁忙期に価格を上昇させ、売上、利益を集中させる傾向がある。従来のレベニューマネジメントの議論では価格のコントロール段階におけるマネジメントが注目される傾向があるが、今後は計画段階におけるマネジメントをより詳細に研究する必要があるだろう。 計画段階におけるマネジメントを重視べきであるという同様の傾向は、前年度に実施した財務尺度、非財務尺度への貢献要因の分析でも得られている。マネジメントサイクルにおける管理の力点の違いは、本研究における重要な発見であると考えている。
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