研究課題/領域番号 |
24530577
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
福田 淳児 法政大学, 経営学部, 教授 (50248275)
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キーワード | 組織学習 / 探索学習 / 活用学習 / MCS / タスク・コンフリクト |
研究概要 |
「組織の学習志向および学習プロセスに影響を及ぼす組織要因研究」では、マネジメント・コントロール・システムをはじめとする組織要因が組織学習に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。2012年度の研究において組織学習をMarchの議論に基づいて探索学習志向と活用学習志向に分け、それぞれの組織学習志向にMCSをはじめとする組織要因がどのような影響を及ぼすかの仮説の設定を行なった。2013年度は組織の探索学習志向や活用学習志向に組織が直面する環境、組織構造またMCSの利用方法がどのような影響を及ぼすかについて、2012年度に設定した仮説に基づいて、質問票の設計を行なった。質問票の設計の過程で、経営学や管理会計論の領域において、組織学習を対象として行われた研究、特に定量的な研究を中心にレビューを行ない、各変数の測定尺度について検討を行うことで質問票の設計をおこなった。 質問票は2014年2月に東京証券取引所1部また2部に上場している製造企業の事業部長またはカンパニー・プレジデントを対象として送付した。最終的に127通の回答を得た。3月末より回答を得た質問票の分析を一部実施しているところである。 また、大企業の組織学習だけではなく、比較的創業間もない企業を対象とした企業を対象とした研究のレビュー並びに聞き取り調査にもとづいて、積極的に組織学習が行なわれているスタートアップ企業におけるトップ・マネジメントの役割やMCSの発展に関する研究のフレームワークを文献レビューやインタビュー調査に基づいて福田(2014)において提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2013年度は組織の探索学習志向・活用学習志向や組織学習プロセスに影響を及ぼす組織要因に関連して2012年度に提示した研究フレームワークに基づいて質問票を作成し、日本企業を対象とした郵送質問票調査を行なうことを予定していた。この計画に基づいて、2013年度中に関連領域で定量研究を行った研究に的を絞りレビューを行うことで各変数の測定尺度を検討し、質問票の設計を行なった。これによって、2014年の2月に東京証券取引所の1部2部に属する製造企業の事業部長またカンパニープレジデントを対象とした郵送質問票調査を実施することができた。 また、東京証券取引所に上場しているような大規模企業だけではなく、創業間もない企業を対象とした研究のレビューを実施するとともに、数社の企業への聞き取り調査にもとづいて、組織の学習志向や学習プロセスに対する組織構造、MCS、トップ・マネジメントのはたす役割についての研究のフレームワークを福田(2014)において提示することができた。 これらの実績により、本研究はおおむね予定通りに進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は2013年度に東京証券取引所の1部・2部に上場している製造企業の事業部長またカンパニープレジデントを対象として実施した郵送質問票の回答結果の分析を継続し、そこで得られた成果の一部を論文の形で公表する予定である。そのさいに、データの解釈またこれまでの研究との比較が必要となるので、経営学および管理会計論の領域において組織学習をテーマに近年行われた研究を中心に文献レビューを継続する予定である。 さらに、質問票の回収にあたって、今後の聞き取り調査に応じてくれる企業が10事業部ほどあった。これらの事業部を対象として、質問票調査の回答結果の分析で生じた発見事項、特に事前に設定した仮説とは異なる発見事項については聞き取り調査に焦点をあてて行なう予定である。これによって、組織の学習志向に影響を及ぼすMCSをはじめとする組織要因の関連性をより詳細に明らかにすることが期待できる。さらに、日米企業の国際比較の観点からも、アメリカ企業を対象とした聞き取り調査も継続的に実施する予定である。 さらに、今年度は本課題の最終年度にあたることから質問票調査また聞き取り調査などで得られた研究成果の公表も行なう予定である。現時点では法政大学イノベーション・マネジメント研究センターにおいて公開講演会を開催する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
「組織の学習志向および学習プロセスに影響を及ぼす組織要因研究」において、2013年度は国内での聞き取り調査が主に東京周辺の企業への聞き取り調査となったために国内旅費が予定より少ない金額であった。また、質問票調査を実施した時期が2月であることもあり、学生による補助を十分には受けることができず予定を下回ったことが次年度使用額が生じた理由であると考えられる。 2013年度に既に実施済みの質問票調査において、今後の聞き取り調査に協力をしてくれる事業部が10ほど存在している。2014年度は、これらの事業部長への聞き取り調査を積極的に行う予定である。また、アメリカ企業への聞き取り調査も継続に実施する予定である。このために、国内また国外での調査旅費が支出される予定である。また、これらの聞き取り調査に関連して、電子データの文字おこしのために費用が発生する。さらに、質問票調査や聞き取り調査のまとめなどを学生アルバイトを利用して行なう予定であるので謝金が発生する。また、2014年度は「組織の学習志向および学習プロセスに影響を及ぼす組織要因研究」の最終年度であることから法政大学イノベーション・マネジメント研究センターにおいて公開講演会を実施する予定である。このための費用も支出する予定である。
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