研究概要 |
会計情報の開示頻度と投資家間の情報の非対称性との間の内生性, すなわち「四半期開示が情報の非対称性を縮小したのか, それとも利益情報の質が高い企業が早期に四半期財務諸表を自発的に開示したのか」を明らかとするためにDifference-in-Differences modelを使用した実証分析を実施した. これにより2003年度の四半期情報開示の開始, および2004年度の開示内容の充実が, 株式市場参加者間の情報の非対称性, ならびに流動性に対して与えた影響を明らかとすることを試みた. (この結果は英語論文として取りまとめ, 現在, 海外の査読付学術雑誌に投稿, 審査中である.) またCorporate Social Performance (CSP) と会計情報の質との関係について, 実証研究を実施した. ここではSuto and Takehara (2012)で開発された雇用, 社会貢献, 安全性, ガバナンス, 環境の5分野からなるCSP Dimensional Indicesと, Composite CSP measureを使用した, また会計利益の質としては, accruals based earnings management measureと, real activities based earnings management measureの両方を使用した. 分析の結果, ガバナンスの不良な企業のreal activities based earnings managementの規模が大きいことが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
四半期財務諸表開示が投資家間の情報の非対称性に与えた影響に関しては, 当初の計画通りに研究を実施した. 平成24年度の実施することを計画していた, その他包括利益の情報内容の分析については, 2年分のデータでは統計解析の信頼性が確保できないと考えられたため, 平成25年度以降の研究対象と変更した. 逆に平成25年度以降に実施を計画していた企業のCorporate Social Performanceと会計情報との関係の分析を前倒して平成24年度に実施した.
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今後の研究の推進方策 |
高頻度データ(株式個別銘柄ティックデータ)を使用した分析については, 2012年6月末までのデータについて, 2次加工データベースを構築した. 平成25年度においては, どうデータベースをさらに1年間延長するとともに, 企業業績予想の改訂が株価発見過程に与える影響についての実証研究を開始する予定である. またオプションアプローチを用いて推定された企業の債務不履行リスク, Corporate Social Performance, 会計情報の質に関しても, 使用データの整備を終え, 平成25年夏以降に研究を実施する予定である.
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