本研究は、税負担削減行動のいくつかの指標について理論的・実証的に検討し、それらの日本における特徴および有用性を明らかにするものである。第2年度である平成25年度では、残余BTD(residual book-tax difference)および(total) BTDという2つの指標に焦点を合わせた。 前者については、前年度に単体データを用いた場合の残余BTDの基本的な傾向が明らかになったので、本年度は連結データを用いて分析を行うとともに、これら2つの結果を比較検討した。その結果、残余BTDを求めるモデルの決定係数は連結データの方が高くなること、連結データによるBTDと残余BTDの差は単体同様に負の値をとるがその規模は大きくなっていること、BTDと残余BTDが同じような動きをするという傾向は単体と同じであること等が明らかになった。加えて、連結の場合には、残余BTDが正の値をとる年度・業種が多いこと、全体的にみて製造業は非製造業に比べてBTDと残余BTDの差の規模が大きいこと、特に自動車・海運・ゴムといった業種で両者の差が広がっていること等が明らかになった。 後者は近年のBTDの傾向や決定要因を明らかにするものであるが、本年度は連結および単体データを用いて、その全体的な傾向を把握した。その際、2005年度以降は課税所得の実績値が利用できないため、税額からの課税所得推定値を用いてBTDを計算している。分析の結果、連単ともに2008年度に大きな負のBTDを生じさせていること、1999年度以降にBTDのばらつきが大きくなっていること等が明らかになった。
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