研究課題/領域番号 |
24530586
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
戸田 統久 近畿大学, 経営学部, 准教授 (70550052)
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キーワード | 統合報告 / 学際的研究 / 統合報告事例分析 / 統合報告フレームワーク |
研究概要 |
本研究は、「統合レポーティングによる無形資産情報開示の学際的研究」をテーマとした2012年度~2014年度を研究期間とした3年の研究であり、当該年度(2013年度)は研究期間の中間の年度であった。2012年度(前年度)の研究課題である「企業情報開示に関する学際的研究(学際的基礎理論研究)」(細目課題:①社会学的アプローチによる企業情報開示制度設計の理論研究、②経営戦略論を含むビジネス・プロセス開示の理論研究、③情報ニーズと財務報告書の限界に関する理論研究)はおおむね順調に達成できた。 そして2013年度(当該年度)の研究課題は「統合レポーティングの制度およびモデルに関する研究」であり、設定した細目課題は、④各種企業レポーティング・ガイドラインの内容と歴史的経緯の研究、⑤各種企業レポーティングの事例研究、および⑥統合レポーティングに関する先端理論研究、の3つであったが、前年度同様いずれもおおむね順調に研究を遂行することができた。 とくに、上記⑤については、国内の事例だけでなく海外の事例(なかでも南アフリカ共和国と北欧諸国)も取り扱うことができ、⑥については、統合レポーティングのフレームワーク設定団体であるIIRC(国際統合報告評議会)が2013年12月9日に公表した国際統合報告フレームワークの解釈・分析および理論的整理をおこない、その成果を4回にわって学会等で報告することができた。 また、当該年度には、2つの学会の統合レポーティングに関する研究グループにも参加することが決定し、さらに国内の統合報告書作成企業の担当者ともパネルディスカッションを実施することを通じて、次年度の研究のために必要な研究基盤(ネットワーク)も形成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度中は、前年度の研究課題である「企業情報開示に関する学際的研究」から踏み込んで、「統合レポーティングの制度およびモデルに関する研究」という、より統合レポーティングに接近した研究成果を上げることができた。実績としては、以下のように研究成果を4回にわたって学会・研究会等で報告することができた。 i)日本知的資産経営学会第2回研究大会(H25年8月27日)のスタディグループ報告(中間報告)にて研究報告。報告タイトル「財務情報・非財務情報の統合に関する企業経営者の対応の国際比較研究」のうち「IIRC1参加企業の事例研究」を担当報告。 ii)国際会計研究学会第30回全国大会(H25年9月15日)にて研究報告。報告タイトル「統合報告フレームワークにおける資本とビジネスモデルに関する考察」(自由論題報告)。 iii)知的資産経営フォーラム2013(日本弁理士会主催・H25年12月13日)にて研究報告およびパネルディスカッション。報告タイトル「統合報告の現状と課題―事例を踏まえて」のうち海外企業のベストプラクティスを報告。 iv)国際会計研究学会研究グループ(研究課題「国際統合報告フレームワークの形成と課題」)第2回研究会(H25年12月28日)にて研究報告。報告タイトル「IIRCフレームワークの基礎概念に照らした統合報告書の事例分析」。 上記のように、当該年度の細目課題として設定した④各種企業レポーティング・ガイドラインの内容と歴史的経緯の研究、⑤各種企業レポーティングの事例研究、および⑥統合レポーティングに関する先端理論研究という3つの区分課題のうち、とくにIIRCの最新のフレームワークの理論的分析および解釈(⑥)と、当該フレームワークに照らした統合報告の事例分析(⑤)を中心に有意義な研究成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度にあたる2014年度(次年度)は、当該年度より継続する「統合レポーティングの制度およびモデルに関する研究」の後半部分であるが、その細目として⑦統合レポーティング・モデル(ないしフレームワーク)の研究に取り組む予定である。 IIRCの国際統合報告フレームワークが2013年12月に完成・公表され、今後はそれを踏まえた企業実務が拡大・増加していくものと予測できる。そのため、今後の研究の方向性としては、とくにレポーティング事例の収集と分析、およびインタビュー調査やアンケート調査等によるフィールド・リサーチに力点を置き、本研究が実務的なインパクトを与えることができるよう、研究を推進していく。そして前年度と当該年度の研究成果をあわせて、統合レポーティングの学際的理論と実践モデルの分析を体系化し、研究期間終了後に著書として発表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は、当該年度の物品費、とくに消耗品の購入および図書等の文献購入が次年度に持ち越されることとなったためである。消耗品の購入については、これまで使用してきたPCのOSであるWindows XP のサポートが2014年4月に終了することとなったため、そのサポート終了までOSソフトウェアおよびPC関連消耗品の購入を可能な限り差し控えたためである。また、図書等の文献購入については、IIRCによる国際統合報告フレームワークの公表が2013年12月であったため、研究上重要な文献の出版は2014年以降になると予測し、また次年度にデータ分析のための人件費(アルバイト雇用)が必要となる可能性が高いと見越し、図書等の購入を見合わせたためである。 次年度は当該年度に見合わせた物品(とくに図書等文献とPC関連消耗品)について、次年度の当初予算額と合わせて、交付予定額の限度まで購入する予定である。 また、次年度には、数多くの統合報告書の実務事例の収集・分析をはじめ、フィールド・リサーチを本格化させる予定であるので、資料収集と整理およびデータ分析のためのアルバイトを雇用するための人件費が発生する予定であり、またその作業用のPCも購入する必要が生じる予定である。
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