研究課題/領域番号 |
24530591
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 流通科学大学 |
研究代表者 |
来栖 正利 流通科学大学, 商学部, 准教授 (80268573)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 事業構造改革費用 / 経営者の財務会計行動 / 企業の存続可能性 / 経営事象 |
研究概要 |
四半期決算短信に開示された費用項目の計上額が主要財務指標に与える影響に着目し、当該会計実践を指向する経営者のインセンティブが一株当たり四半期損益の顕著な変動の回避(平準化)にあるか否かを検証することが本研究課題の内容である。 上述の研究課題に基づいて本年度に行った研究は事業構造改革費用を巡る経営者の財務会計行動を説明するために設定する仮説構築に役立てるいくつかのシナリオを提示したことである。その含意は次の通りである。当期業績主義に基づく期間損益計算を指向する行動規範を根底に据えている点を考慮すれば、事業構造改革費用を見越し計上する利益平準化策よりも、因果関係を見出し得ないものの、特別損失として期間損益計算を実施する会計処理手続きを日本企業の経営者は選好すると期待される。 上述の研究を行う過程で調べた先行研究は制度の概要の検討に特化したものが大半であった。これは価値関連性および/または経営者の財務会計行動を分析対象にした研究成果が今後、公刊され、研究成果の蓄積がすすむものと期待されるということを意味する。本研究課題は今後の実証分析の実施を予定しているものの、まずは会計実践の動向を把握したいという関心事項に基づいて、事例分析の調査を行うべく準備したい。この準備の一環として次の研究成果も得た。 次に、前述の仮説構築に活用するシナリオに基づいて行う実証分析に使用するデータ・ベースの更新を目指すべく、連結決算短信および四半期財務報告書および有価証券報告書のダウンロード作業を行った。これらの資料(ダウンロードされたPdfファイル)は東京証券取引所および大阪証券取引所に上場している日本企業である。具体的には、日経225(NIKKEI TOPIX)に組み込まれている銘柄からなる上場企業のうち金融業を除く上場会社およびJASDAQ上場企業である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下記に示した研究計画に基づいて必要なデータの収集に努めた。達成度が100%ではないものの、データ収集に要する時間の「ズレ」を予め加味した上での本年度の計画であったため、次年度中に必要なデータを完備できれば当初の計画通り、研究目的を達成できると考えている。想定内であるものの、当年度に着手できなかった作業は収集したデータをデータベースに入力する作業である。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの達成度」に記したとおり、想定済みの研究計画との「ズレ」を解消すべく収集済みのデータを既存のデータベースに追加入力する作業と会計実践の事例分析を行うための悉皆調査に着手することが次年度に行う主たる研究活動になる。 四半期決算短信から構築したデータ・ベースの更新と四半期財務報告のダウンロードが本年度に行う主たる活動になる。前述したサンプル企業の2008年6月(第一四半期財務報告)から直近のそれらのダウンロードを短期間で終了することが本年度の作業である。なお、財務報告のダウンロードが不可能な場合、各種研究機関・図書館が保有する『四半期財務報告』の複写・閲覧サービスを活用し、データ確保に万全を期す。減損損失と事業構造改革費用の計上状況を把握するために、四半期決算短信の悉皆調査も併せて開始し、既に構築しているデータ・ベースに追加入力する。
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次年度の研究費の使用計画 |
「今後の研究の推進方策」の内容を踏まえ、次年度の研究計画の詳細は次の通りである。平成24年度から開始しているデータ確保を継続して行うことが本年度に行う活動になる。本年度は平成24年度に行った四半期決算短信の悉皆調査の結果と四半期財務報告に開示されている減損損失と事業構造改革費用の計上状況との比較分析を開始する。この目的は監査の有無が当該費用項目の認識測定に与える影響を観察するためである。なお、この作業は統計手法を用いるのではなく会計実践の類型を試みる記述理論の構築を指向した実証分析である。 前述の研究計画に基づいて、研究費の使途計画の概要を述べる。悉皆調査のアシスタントとして大学院学生のアルバイトを雇用し、収集資料(決算短信および四半期財務報告および有価証券報告書)を通じて入手できる事例の整理を依頼するかもしれない。加えて、会計実践の事例分析に基づいて、具体的な研究課題を絞り込む作業を円滑かつ有効に進めるために、類似研究を行っている研究者の助言を得るべく出張に出かける。
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