研究課題/領域番号 |
24530595
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
眞崎 睦子 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (40374631)
|
キーワード | 自助組織 / self help group / gateway drug / Alcoholics Anonymous / 自殺 / 問題飲酒 / 断酒会 / 薬物教育 |
研究概要 |
自助組織(自助グループ、self help group)とは、共通の問題を抱える個人及びその家族が自らの意思で参加し、「言いっ放し・聞きっ放し」という特徴的なコミュニケーションにより問題の解決あるいは緩和をはかる団体である。1930年代にアメリカのアルコール依存症者の間で始まり、欧米を中心に様々な問題を抱える当事者たちの間で形成されるようになった。研究代表者はこのような自助組織を「指導者や専門家のいない相互教育集団」ととらえる。本研究では、日本型の自助組織として発展をとげてきた「断酒会」の社会啓発活動のあり方及びその変遷を探る。 断酒会は1960年代に組織されて以来、アルコール依存症者の回復を支援し、「酒害」を未然に防ぐための社会啓発活動を行ってきた。これらの活動に新たに加わったのが「自殺予防」の観点である。日本国内の自殺者数が年間約3万人で推移している状況において、問題飲酒と自殺の関連は無視できない課題となった。それを受けて各地の断酒会が自殺予防のための社会啓発活動を展開している。 平成25年度の取り組みの成果の一つとして、アメリカ(イリノイ州シカゴ)で開催されたThird Aging and Society: An Interdisciplinary Conference(University Center Chicago, Chicago, USA)における発表をあげる。タイトルはOn the Role of Danshukai: A Self-help Group in Japan's Aging Society(日本の高齢化社会における自助組織断酒会の役割)である。 また、別課題ではあるが、未成年者を対象とした冊子『お酒を手にした未成年のあなたへ―断酒会会員と家族からの手紙―』を編集・刊行したことも本研究課題への取り組みに寄与した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究計画にしたがって、国際学会発表、国内における資料収集、教育・研究活動を行った。 国際学会発表についてはアメリカ(イリノイ州シカゴ)で開催されたThird Aging and Society: An Interdisciplinary Conference(University Center Chicago, Chicago, USA)において発表を行った(On the Role of Danshukai: A Self-help Group in Japan's Aging Society)。この他、アメリカ(ワシントン州シアトル)ではAA(Alcoholics Anonymous)、Al-Anon(AAの家族グループ)を訪ねた。 国内においては沖縄はじめ全国各地の断酒会主導のイベントに参加するなどして資料収集を行った(東京断酒新生会60周年記念大会、全断連第50回全国(沖縄)大会、他)。東日本大震災の被災地の断酒会を訪ねたことも特筆すべきであろう(仙台、塩竈)。 教育活動としては北海道大学主題別科目「社会の認識」講義題目「社会問題としての飲酒」を開講・担当し、自助組織の実際について分析を加えた。 研究・教育活動に並行して関連のテーマについての講演を行い、その都度資料収集を行った。五島市健康推進員研修会「飲酒関連問題について考える」(6月長崎県五島市健康政策課)、大分住民公開セミナー「社会問題としての飲酒」(8月大分県断酒連合会大分市大南断酒会)などである。 なお、他の研究助成を得てではあるが、未成年者を主な対象とする『お酒を手にした未成年のあなたへ―断酒会会員と家族からの手紙―』を編集し、刊行したことも本研究課題への取り組みに寄与したことも記す。
|
今後の研究の推進方策 |
国内各地の自助組織断酒会における資料収集及び調査を続行し、本研究課題における成果の発表につなげる。 国際学会については、Ninth International Conference on Interdisciplinary Social Sciences(University of British Columbia,Vancouver, Canada, 11-13 June 2014)を予定している。 並行して、北海道大学主題別科目「社会の認識」講義題目「社会問題としての飲酒」を開講・担当し、自助組織断酒会の社会貢献・啓発活動の可能性を探る。
|