研究課題/領域番号 |
24530597
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 俊樹 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (10221285)
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キーワード | 自己産出系 / 理解社会学 / syntaxとsemantics |
研究概要 |
本年度は昨年度にひきつづき、自己産出系の理論モデルの改良を進めた。特に従来の理解社会学的行為論とのちがいを明確にした上で、それを視覚的にわかりやすい手段をつかって表現する技法と経験をつちかった。 具体的には、マイクロソフトのpowerpointの描画機能をもちいて、従来の行為論の枠組みと、自己産出系を可能にする意味の事後決定性を組み込んだ枠組みとの間で、相互行為の展開がどのようにちがってくるかを動画の形で表現した。相互行為や社会システムの自己産出は本質的に時間的に展開される事象である。したがって、それを理解し表現するためには、時間的な展開を表現できるツールが最も適している。いくつかの描画ソフトも試してみたが、試行錯誤の結果、最も必要なのは二次元画像の精密さではなく、時間的展開の表現であるという結論にいたりつき、動画化を採用した。 関連して、社会学的行為論の歴史的形成過程も研究し、社会システム論とも密接に関連する方法的個人主義と方法的全体主義の対立が、従来いわれてきた19世紀末~20世紀初めの、デュルケムやジンメル、ウェーバーらの世代ではなく、そのほぼ50年前の道徳統計学者たちに由来することを明らかにして、社会学的行為論およびシステム論についての理解をふかめた。 これらの成果をふまえて、自己産出系のsyntaxとsemanticsを数理論理学の形式をふまえた形で再定式化して、論理的に明晰で体系的な理論の構築に必要な共通フォーマットを試作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度は適切な視覚的表現手段の探索と習得に多くの時間がとられ、実際の表現の作成には全く進めなかったのに対して、今年度は視覚的表現を実際に作成し、非常勤の集中講義の場で使ってみた。実地の使用は最終年度の課題として考えていたが、それを一部前倒し的に実現できた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は自己産出系の視覚的表現をより改善するとともに、本年度の研究のなかで課題として明確になった、syntaxとsemanticsの形式論理学的定式化を進めることで、論理的で体系的な理論言語の構築を図る。 すでに着手済みの作業であり、特に大きな障害はないと思われる。
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