研究実績の概要 |
最終年度にあたる2014年度には、5月にモントリオールで開催されたSocial Policy and Health Inequalities: An International Perspective会議に出席し、国際的視点からの知見を深め、6月にはシニア社会学会「災害と地域社会」研究会にて、7月にはISAのThematic Group on Sociology of Risk and UncertaintyのセッションEmotions, Trust, Hope and Other Approaches to Coping with Vulnerability Amidst Uncertaintyにて、また11月には科学技術社会論学会「知、関係性、消費:食と農の放射能汚染」セッションにて研究報告を行った。並行して、健康/環境リスクをめぐるテレビ報道のアーカイブスなどを利用した上で分析を行い、日本社会学会誌『社会学評論』にて論文「被ばくの語られ方」を発表した。その他に、フィールドワークとグループインタビューを継続的に実施しデータを集めた。 研究期間全体を通じ、主として質的調査を軸とした実証研究を行い、健康や環境に関するリスクを人びとがどのように理解/認知し、生じた「不安」をめぐってどのように対処しているのか/していないのか、資料およびデータを多角的に集めた。日常生活の中でのリスク認知と対処の方法はさまざまな社会的要因と連動していることの観察をとおして、「科学的正しさとリテラシー」を前提とした「望ましい消費者/市民像」との乖離について考察した。「乖離」が必然的に生じるメカニズムについて明らかにすることは、今後の「リスク・コミュニケーション」のあり方を批判的に再検討することに寄与すると思われる。
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