研究課題/領域番号 |
24530601
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
中井 豊 芝浦工業大学, システム工学部, 教授 (00348905)
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研究分担者 |
武藤 正義 芝浦工業大学, システム工学部, 准教授 (00553231)
瀧川 裕貴 東北大学, 学内共同利用施設等, 助教 (60456340)
金澤 悠介 立教大学, 公私立大学の部局等, 助教 (60572196)
朝岡 誠 立教大学, 公私立大学の部局等, その他 (70583839)
堀内 史朗 山形大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (90469312)
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キーワード | コモンズ / 過少利用 / 適正管理 / 過疎化 |
研究概要 |
経験的研究に関しては、昨年度からの継続で西粟倉村でフィールドワークをおこなった。25年度は、外部者がコモンズ利用に参入するために必要な条件を明らかにするために、さまざまなかたちで西粟倉村に移住してきたUIターン者への聞き取り調査をおこなった。ものづくりに関わる仕事を媒介にし、かつ地元コミュニティとは適度な距離をとることで、外部者は地元住民が守ってきたコモンズに有機的に関われていることが明らかとなった。 モデル・理論構築に関しては、24年度、コモンズの抱える新しい課題として過少利用の問題(堀内)と適正管理の問題(朝岡)を設定したが、25年度は、別の課題として、コモンズの悲劇の舞台そのものが消失してゆく過疎化の問題を設定し発表した(中井)。また、異質な行為者からなる多元的な社会における寛大な信頼の進化(瀧川)、地域リーダーによるコミュニティ統合の可能性(朝岡・武藤)に関して検討・発表を行った。更に、コミュニティと異質な他者との相互作用に関する理解を深めるため、森林管理だけに限定せず、文化保護活動に関する調査も行った(堀内)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度の計画においては、西粟倉村への本調査の実施と、より本格的な数理・シミュレーションモデルの構築により政策提言の基盤づくりを目指すこととしている。前者においては、コミュニティと外部者の適切な関係性がコモンズの持続的な維持につながることを明らかにしたことが大きな成果である。また後者においては、24年度に設定した共有林の過少利用および適正管理の観点の両モデルに関して深掘を進めているが、これに加えて新たに、コミュニティの過疎化に着目し、外部者とコミュニティの共同事業を念頭において過疎化阻止のモデルの構築に着手したことが成果である。
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今後の研究の推進方策 |
①経験分析班:平成26年度は西粟倉村のフォローアップを行う。調査は、少人数による短期の参与観察を実施する。 ②モデル分析班:経験分析班の本調査の知見をもとに、24年度に構築した過少利用のモデル、資源の適正管理モデルの深耕・発展を進めるとともに、25年度に着手した過疎化阻止モデルを完成させる。またこれら以外のモデル(寛大の進化、地域のリーダーシップ等)の検討とも併せて、新たな共同管理が可能になる社会的条件や、私有や公有という管理形態から新たな共同管理への移行が可能になるメカニズムの検討を行う。 ③社会理論班:25年度は、異質な行為者からなる多元的な社会における寛大な信頼について検討を進めた。26年度は、様々なモデルを規範的社会理論に依拠して意味付けを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は長期のフィールドワークを計画していたが、UIターン者へのインタビューに切り替えた。また、既構築のモデルに対して規模なパラメータ探索を計画していたが、別の観点のモデル探求を進めることとした(パラメータ探索は26年度に実施)。総じて、順調に推移しており、効率的な研究活動運営ができた。 西粟倉村におけるフィールドワークでは、経験分析班のメンバーと他の班の代表者を含めた4人で、UIターン者とコミュニティの関係性に関してフォローアップ調査を行う。この作業を通じて、構築中の3つ(過少利用、適正管理、過疎化阻止)のモデルが示すリアリティを検証する。モデル・理論構築においては、3つのモデルのシミュレーションを実施し、そのダイナミックスを明らかにして、モデルの内在的な妥当性を検討する。その上で、新たな共同管理を生む社会的条件や新たな共同管理への移行メカニズムを探索する。この作業は、エージェントの数を増やした中で多数のパラメータ空間を探索するため、高性能マシン(Studio XPS 9100)を使って長時間の大規模計算を行う。また26年度は最終年度に当たるため、これまでの成果を基に国外の研究者との共同研究を実施するとともに、論文の投稿等、成果の公表に努めてゆく。
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