今年度は、まず、前年度に実施した台東区郵送調査のデータを点検し、既存の調査データと比較できるように整備を行った。また、調査作業やデータ分析のインフラとなる技術についても情報収集と習熟のために相当の時間を費やした。そして、これまでに実施してきた調査地域に対して、社会・経済・文化的に対照的な特徴を有するような地域として板橋区を選定し、新たに郵送調査を行った。 これまでの調査設計に合わせ、母集団を板橋区在住25-64歳男女とし、1685名を無作為抽出・転記した。宛先不明などを除外して1619名へ郵送調査を行い、暫定回収数は375、暫定回収率は約23%となった。過去に実施した調査に比べると、回収率が低めとなっている点が気にかかる。対象地域の特徴である可能性も考えられるが、調査実施時期の前に、ベネッセ個人情報流出事件(2070万件)、中国組織による米病院チェーンへの不正アクセス(450万人)、韓国での個人情報流出(2700万人)など、国内外での大規模な個人情報流出の報道が続き、懸念が高まっていたことも一因かもしれない。 調査票回収後にエディティング作業、データ入力、ロジカルチェック、データクリーニングなどの一連の作業を実施した。そして、吹田市、桐生市、府中市、世田谷区、足立区、中央区、台東区に加え、新たに板橋区を含めて、社会階層と社会的ネットワークについて地域比較分析を行った。 これらの地域は、様々な点で異なる特徴を有しており、社会階層や社会的ネットワークにおいても違いが見られる。しかし、それぞれの地域において、面識のある他者の職業の種類を問う項目群が、因子分析で潜在変数としてまとめられることを確認した。そして、多母集団解析を行い、配置不変、測定不変についてある程度の支持を得られる結果を見出し、平均構造について検討を行った。
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