本年度は、最終年度であり、最終報告に向け、与那国町と台湾において確認調査を行うとともに、これまでの成果に基づいて日本社会学会での中間報告を行った。 まず、9月には、町議会選挙の視察を中心に与那国町における現地調査を行った。具体的には選挙活動、投票、開票などを視察するとともに、共同売店、アヤミハビル館などでヒアリングを行った。議員選挙は、野党が自衛隊誘致の是非を前面に押し出すのに対し、与党は政策全般を訴えた選挙であった。また、ヒアリングでは、基地建設による動植物に対する影響は少ないと町役場では判断していることなどが明らかになった。 また、2月には、台北市で主に資料収集を中心に確認調査を行った。具体的には、沖縄県観光コンベンションビューローや日本交流センターなどを訪問するとともに、國家圖書館、國立臺灣圖書館などで資料収集を行った。とりわけ、与那国と姉妹関係にある花蓮市について、日本総督府時代の状況に関する状況を把握することができた。 これらの調査を通じて、自衛隊誘致推進により住民の間に亀裂が生じたことが具体的に明らかになり、今後、その亀裂が地域社会にどのように影響していくのかを追尾する課題が生じた。また、台湾と沖縄との関係が深まる中、与那国町がどのように姉妹都市である花蓮市を中心に、近隣の台湾との関係を切り開いていくかが課題として浮かび上がり、その手がかりとして、過去の記憶を基に地域の活性化を図る市民活動に注目することが重要であることが明らかになった。
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