研究課題/領域番号 |
24530609
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
山中 速人 関西学院大学, 総合政策学部, 教授 (80191360)
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キーワード | 国際研究者交流 / トルコ / 文化表象 / 地域研究 / イスラーム / 宗教的シンボル |
研究概要 |
この研究の問題意識は、都市のアイデンティティにかかる文化的表象の可視化が急速に進行しているのではないかというものであった。本研究では、大阪・生野界隈(日本)のコリアン集住地域とイスタンブール(Istanbul, Turkey)・ファーティー(Fatih)界隈(トルコ)を対象として選び、共通する手続きにしたがって映像で記録し、その映像を比較分析することによって、地域社会の宗教/エスニック文化の変化を通文化的な位相において明らかにすることを試みた。 12年度では、イスラームに関連する宗教的シンボルが、街頭景観の中にどのように現れているかについて、イスタンブール市内の3つの街路(Carsamba, Ihlamurdere Cd、Barbaros Blv)を選び比較した。調査方法は、まず街路の一部をサンプルとして選び、街路を歩行しながら、広角ビデオカメラで街頭景観を切れ目なく撮影し、その映像の中に写っているすべての人々の服装を、イスラームを象徴する服装のタイプで分類し、その数と比率を求めた。 13年度では、イスタンブール居住者10名をインフォーマントに選び、同じ映像を視聴してもらい、その映像の中に現れる、どのような宗教的表象についてインフォーマントが反応するかをインタビュー調査した。 結果として、まず、インフォーマントが最も頻繁にかつ強く反応した対象は、映像に現れた人々が着用しているイスラーム式の服装であった。つぎに強く反応したのは、商店の店名や店頭に陳列された商品やその広告/掲示に示された、イスラーム文化に関連する言葉や概念であった。一方、インフォーマントが反応した対象の中で、地域の歴史的構造物に関わる表象は、わずかであった。この地域における宗教的表象の特徴は、ハードな構築物よりも、むしろ人間の服装や店頭の商品や広告に見られるような流動性にあるという知見がえられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イスタンブールでは、トルコの現政権に対する抗議運動が頻発しているため、現地での街頭撮影やフィールドワークに困難が予想された。しかし、現地カウンターパートであるイスタンブール大学社会学研究所教授、シェイマ・ギュンギョル博士の協力により、データ収集やインタビュー調査をきわめてスムーズに進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本報告で明らかになったように、街頭景観を構成する宗教的表象として、停留し行き交う人々の服装がもつ訴求力の相対的な大きさに、あらためて注目をする必要があるように思われる。このような問題意識を持続しながら、本研究プロジェクトの最終年度である2014年では、可視化する宗教/エスニック・アイデンティティとして、さらに服装をターゲットに絞り込んで、研究を進めるとともに、最終年度である14年度では、すでに撮影が完了している大阪生野との比較分析を中心に、研究全体をまとめる作業に入りたいと考えている。
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