本研究は、日本の近代化過程を、動員(労働動員及び軍事動員)という観点から捉えなおし、戦争や植民地といった負の側面と経済発展や人権といった望ましいとされる側面とを、「統治合理性(M.フーコー)」の一貫した論理のもとに把握するという全体構想の中に位置づけられる。そのため、本研究では、第二次世界大戦(アジア太平洋戦争)期の、植民地朝鮮からの労働動員に焦点を当て、日本において犠牲になった朝鮮人の遺骨をめぐる諸問題を中心に、歴史社会学的方法及び聞き取り調査等によって総合的に把握することを目指す。最終的には、日本の近代化過程における統治合理性の「動員モデル」を構築する。具体的な研究過程としては、一方で戦争遂行としての強制動員の実態解明とともに、それがいかなる動員計画のもとに実施されたかを検討し、計画と実態の齟齬を解明する必要がある。 平成26年度の研究実績については以下の通りである。 ①植民地動員の実態解明については、歴史学を中心に、日本と韓国で新たな研究が蓄積されつつある。ただ、社会学的研究はほとんど存在しないため、社会学的関心からそれらの新しい研究成果を読み解く必要がある。そのため、戦争社会学研究会、強制動員全国研究集会等に参加し、資料収集、情報収集を行った。 ②新たな研究の社会学的解読作業と並行して、実態解明のための聞き取り調査および史跡の現地調査を行った(筑豊、広島、東京、神奈川、宇部など)。 ③これらの研究作業と並行して「動員モデル」構築の方法論的検討を行い、植民地動員の資源動員論的分析を行うことが有効ではないかという着想を得た。
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