福島原発事故以降世界中で脱原発の動きが広まっているが、核燃サイクル施設や原子力発電所、中間貯蔵施設などを抱える青森県では、さらに原子力開発に依存しようとする動きが強まっている。多少危険ではあっても、原子力開発を起爆剤とした地域づくり運動が進められている。福島県と青森県を比較して、地域代表者に対するアンケート調査、原発や核燃サイクルに反対する住民運動を調査した結果、この動きに対して有効な地域づくり運動は、原発の危険性を訴える学習運動ではなくて、原発に依存しない地域づくりをいかに進めるかを検討する学習運動であることが明らかにされた。 脱「原発・核燃依存」の地域づくりを考える際には、次の3点にわたる課題を地域づくり運動は考慮すべきことが結論づけられた。1つは、地域経済は運動概念であることを理解することである。経済的な豊かさを実現するためには、住民の主体的な運動に結びつくような地域形成の理論が検討されなければならないということである。2つは、住民自治に依拠した地域づくりと人間発達を可能にする地域づくりが目指されねばならないことである。地域づくりを単なる生産性向上の運動としてはならないし、「村を出て行く学力」を子ども達に強制するようなものであってはならないということである。3つめは、地域づくり運動の発展方向として、地域づくりにおけるコミュニティとリージョンという2側面を問題にする運動が展開されねばならないこと、そのためには、市民運動と労働運動の結合などの課題が提示された。 以上の課題をもとに、地域で展開されている様々な地域づくり運動の中に、原発・核燃問題がどのように位置づいているのかを、地域活性化運動、社会保障運動、労働運動、教育運動など15の運動を対象にして自分たちの独自の課題が原発・核燃問題とどう関わるかについて検討した。
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