研究課題/領域番号 |
24530614
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
福田 恵 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (50454468)
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研究分担者 |
奥井 亜紗子 京都女子大学, 現代社会学部, 講師 (50457032)
田村 周一 聖カタリナ大学, 人間健康福祉学部, 講師 (50467643)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 但馬 / 広狭域 / 地方社会 / 人的移動 / 地域交渉 / 関係網 |
研究実績の概要 |
本研究は、兵庫県北部但馬地方の数自治会及び関連組織を定点事例としつつ、各種のネットワーク(林業者、同郷者、医療者などの関係網)の空間範域、時代的変遷および社会特性を実証的に検討した。 2015年度の成果は、以下の通りであった。林業については、林業出稼ぎ者の契約書類、日誌などの資料の整理とそれに関する学会報告を行った。医療については、看護学校の調査データの整理を行った。親族・同郷組織については、京阪神一帯に広がる但馬出身者の飲食業のネットワークがあることを把握し、関連する情報と資料を収集した。 研究期間全体を通して、林業、医療、親族同郷組織の三テーマごとに調査データを検討した結果は、以下の通りであった。①林業の関係範囲が県内外の林業地に及ぶのに対して、医療と親族・同郷組織は但馬地方一帯および京阪神との関連が強かったこと、②林業をはじめとした自然資源利用の関係網が拡大と衰退をする時期に、都市農村にまたがる親族・同郷組織の派生がみられるとともに、少子高齢化を前提とした医療組織の改編がすすんだこと、③それぞれのネットワークが時間的空間的にずれていたことで、結果的に多地域の人びとがその関係の網の目に組み込まれ、但馬地方の社会的関係性や地域意識を支えてきたことなどが明らかとなった。 以上の結果から、地方社会の形成を、定住という視点からのみ描くのではなく、人的移動と地域交渉を介したいくつもの地域の〈複合〉化の視点から描出しうることが明らかとなった。この点は、定住と移動を連結した社会学的モノグラフの提示という点で、調査方法上の意義を有するとともに、今後の地方社会の再生成のプロセスに対しても示唆を含むものである。
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