研究課題/領域番号 |
24530615
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
松井 克浩 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (50238929)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 広域避難 / 東日本大震災 / 原発事故 / コミュニティ / 自治 |
研究概要 |
1.新潟県柏崎市と新潟市において、福島県の警戒区域内外からの広域避難者およびその支援者を対象に聞き取り調査と資料収集を実施した。震災・原発事故以来、時間の経過とともに複雑化・多様化している避難者の問題と、それに対応した支援者の活動や課題を明らかにした。 2.警戒区域である福島県富岡町からの避難者グループの活動を対象に、聞き取り調査と参与観察を行った。避難者が多い地域で実施されるタウンミーティングなどに参加し、広域避難者の生活の実態や将来展望などを聞き取るとともに、避難元自治体との関係づくりや避難先での住民同士のコミュニティづくり、避難当事者の自治に向けた活動の可能性を探った。 3.上記の聞き取り記録や調査データの整理を、学生アルバイトを雇用することにより実施した。また、本年度の調査研究により得た知見については、すでに共著書、学会報告、講演などの機会に発表した。 4.各地で広域避難の問題と取り組んでいる研究者と、研究会等の場において議論・意見交換を行った。避難先の地域により避難者の属性や志向が異なることが分かり、本研究対象の特性を位置づけることができた。 5.収集したデータと文献・資料、および関連分野の研究者との議論をもとに、次年度以降の調査・研究の理論的枠組みを検討した。避難を起点とした時間軸、および避難者の属性(警戒区域内/区域外、世代、性別など)等を重視する必要があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.主要な対象地の一つである新潟県柏崎市と新潟市において、広域避難者と支援者の双方からインテンシヴな聞き取りを実施し、広域避難者の受け入れについて研究目的に資する知見を得ている。 2.とりわけ、柏崎市が被災した新潟県中越沖地震の経験が、今回の広域避難者への支援に活かされていることを知ることができた。被災経験を活かした避難者支援のあり方を記録しておくことは、今後予想される災害に備える上でも重要な知見になり得る。 3.また福島県富岡町の広域避難当事者グループの活動にコミットしつつ聞き取りを行うことによって、当初の研究目的を超えた知見を得つつある。その一方で、予算減額への対応もあって、研究目的に掲げた調査対象地のすべてで調査に着手することはできなかった。調査対象地については、今後再検討が必要である。 4.本年度の調査研究により得た知見については、すでに共著書、学会報告などの機会で発表し、さらなる研究の進展を目指して意見交換を続けている。また、陸前高田市、中国・上海市、松山市で講演する機会を与えられ、本研究で得られた成果を社会的に還元している。 5.聞き取り調査等で得られたデータについては、学生アルバイトによりテキスト化を実施し、次年度以降の活用にも備えている。
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今後の研究の推進方策 |
1.前年度に引き続き、新潟県柏崎市と新潟市において、福島県の警戒区域等からの広域避難者およびその支援者を対象に聞き取り調査と資料収集を行う。25年度はさらに、新潟県胎内市、長岡市等を調査対象地に加え、支援のあり方の地域間比較を行うことにしたい。 2.引き続き、福島県富岡町からの避難者グループの活動を対象に、聞き取り調査と参与観察を行う。警戒区域の解除・再編にともなって避難者の状況や将来設計が大きな転機を迎えることが考えられるので、その活動に寄り添いながら調査研究を進めたい。 3.当初の研究計画にあった北九州市や埼玉県加須市などの遠方の調査対象地については、予算の有効活用の観点から、状況の変化も見定めつつ、取り上げるか否かを判断することにしたい。 4.収集したデータおよび文献・資料の検討と、関連分野の研究者との意見交換を進めることにより、理論化や分析枠組みの構築を目指す。 5.研究成果については、引き続き著書や論文、学会報告、講演等を通じて積極的に発信していくことにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.新潟県柏崎市、長岡市、胎内市等で避難者および支援者を対象とした聞き取り調査を行うために旅費を使用する。また、福島県富岡町からの避難者グループの活動を対象に、聞き取り調査と参与観察を行うために、福島県内や関東地区などで行われる活動に参加するための旅費を使用する。またアンケート調査を実施する場合は、その経費を支出する。 2.研究会などの場において、本研究の研究枠組みや知見に関して、関連分野の研究者と意見交換を進める。また、研究成果については、学会報告等を通じて積極的に発信する。そのための旅費を使用する。 3.聞き取り記録や調査データの整理を、学生アルバイトを雇用することにより実施する。そのための謝金を使用する。 4.研究テーマにかかわる図書や資料を購入する。また、クリアブック等の文具を購入する。そのための物品費を使用する。
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