研究課題/領域番号 |
24530615
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
松井 克浩 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (50238929)
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キーワード | 広域避難 / 東日本大震災 / 原発事故 / コミュニティ / 自治 / 支援 |
研究概要 |
1.新潟県柏崎市と新潟市、胎内市において、福島県の警戒区域等からの広域避難者およびその支援者を対象に聞き取り調査と資料収集を実施した。震災・原発事故以来、時間の経過とともに複雑化・多様化している避難者の問題と、それに対応した支援者の活動や課題を明らかにし、論文にまとめ公表した。 2.警戒区域である福島県富岡町からの避難者グループの活動を対象として収集したデータをもとに、分析と検討を行った。その成果は共著書等で発表した。 3.研究テーマに関する空間的な比較対照を目的として、北九州市で広域避難者支援を実施してきた団体にヒアリングを行った。支援の枠組み等に関して重要な知見を得ることができた。また、研究テーマに関する時間的な比較対照を目的として、中越地震被災地の長岡市山古志地区、および熊本県水俣市で被災者と支援者を対象に聞き取り調査を行った。今回の原発事故による広域避難問題のゆくえを考える上で、重要な知見を得ることができた。 4.上記の聞き取り記録や調査データの整理を、学生アルバイトを雇用することにより実施した。 5.各地で広域避難の問題と取り組んでいる研究者と、研究会等の場において議論・意見交換を行った。避難先の地域により避難者の属性や志向が異なることが分かり、本研究の対象の特性を位置づけることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.主要な対象地の一つである新潟県柏崎市において、広域避難者と支援者の双方からインテンシヴな聞き取りを継続的に実施し、広域避難者の受け入れについておおむね研究目的に沿った知見を得ている。 2.とりわけ、柏崎市が被災した新潟県中越沖地震の経験が、今回の広域避難者への支援に活きていることがわかった。被災経験を活かした避難者支援のあり方を記録しておくことは、今後予想される災害に備える上でも重要な知見になり得る。 3.また福島県富岡町の広域避難当事者グループの活動に関するデータを分析することによって、当初の研究目的を超えた知見を得つつある。その一方で、予算減額への対応もあって、研究目的に掲げた調査対象地のすべてで調査に着手することはできなかった。 4.本年度の調査研究により得た知見については、すでに共著書、論文、講演などの機会で発表し、さらなる研究の進展を目指して意見交換を続けている。 5.聞き取り調査で得られたデータについては、学生アルバイトによりテキスト化を実施し、次年度以降の活用にも備えている。
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今後の研究の推進方策 |
1.前年度に引き続き、新潟県柏崎市と新潟市において、福島県の警戒区域等からの広域避難者およびその支援者を対象に聞き取り調査と資料収集を行う。26年度はさらに、新潟県村上市等を調査対象地に加え、支援のあり方の地域間比較を行うことにしたい。 2.引き続き、福島県富岡町からの避難者グループの活動を対象に、聞き取り調査と参与観察を行う。避難の長期化にともなって避難者の状況や将来設計が変動していくことが考えられるので、その活動に寄り添いながら調査研究を進めたい。 3.現在進行中の広域避難と支援の問題を考えるためには、過去の災害経験から学ぶことが重要であるとあらためて認識した。そこで、中越地震による全村避難を経験した長岡市山古志地区の調査研究を今年度以降の研究計画に組み込む。 4.収集したデータおよび文献・資料の検討と、関連研究者との意見交換を進めることにより、理論化や分析枠組みの構築を目指す。 5.研究成果については、引き続き著書や論文、学会報告、講演等を通じて積極的に発信していくことにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
一部の調査対象者との日程調整がうまくいかず、計画通りに現地調査が遂行できなかったため、次年度使用額が生じた。 今年度、新潟県柏崎市、胎内市、村上市等で避難者および支援者を対象とした聞き取り調査を行う際に、前年度に遂行できなかった対象者への聞き取り調査も計画に組み込んで助成金を使用する。
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