新潟県柏崎市と新潟市において、福島県の警戒区域等からの広域避難者およびその支援者、行政担当者を対象に聞き取り調査と資料収集を継続して実施した。震災・原発事故以来、時間の経過とともに複雑化・多様化している避難者の問題と、それに対応した支援者の活動や課題を明らかにし、学会等で公表した。 また、科学研究費補助金の最終年度にあたるので、4年間の研究成果を取りまとめ、共著書や論文として公刊した。「災害からの集落の再生と変容―新潟県山古志地域の事例」(『災害と村落(年報 村落社会研究51)』2015)、「広域避難調査と「個別性」の問題」(『社会と調査』16,2016)、「柏崎市の広域避難者支援と「あまやどり」の5年間」(『人文科学研究』138,2016)「「仲間」としての広域避難者支援―柏崎市・サロン「むげん」の5年間」(『災後の社会学』4,2016)「中越・中越沖から引き継がれた経験知」(『原発避難と創発的支援』2016)、などである。 上記の取りまとめにより、以下の諸点が明らかになった。①新潟県中越地震・中越地震等の過去の災害経験が、今回の広域避難者支援に活かされている。②広域避難者が多い地域では、避難者のコミュニティを形成し、支えるための模索が続いている。③避難が長期化するにつれて、避難者の分断や不安が深まっている。④避難者の再生のためには、時間や空間を考慮しながら社会への回路を結び直すことが必要である。 避難者への支援を一つの契機として、地域の関係性の対自化・再構築への動きが現れつつある。この点を、原発避難計画の策定と関係づけてさらに明らかにすることが次の課題である。
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