研究課題/領域番号 |
24530616
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
伊藤 智樹 富山大学, 人文学部, 准教授 (80312924)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 自己物語 / ナラティヴ / ナラティブ / 病い / セルフヘルプ・グループ |
研究実績の概要 |
平成26年度は、まず、前年度から引き続いて、在宅療養の中できわめて重要な位置を占めると考えられるピア・サポートに関して、基本的な視座であるナラティヴ・アプローチの整備を進めた。その成果は、「ピア・サポートとナラティヴ・アプローチ――方法論的観点から」(『N:ナラティヴとケア』第6号,pp.27-33)にまとめられた。次に、患者(もしくは家族)の自己物語にかかわる他者としての専門職という観点から、臨床心理士との学際的交流を行った(「神経難病に臨床心理士はどのようにかかわりうるのか?――社会学の観点からの提言――」日本心理臨床学会第33回秋季大会自主シンポジウム)。臨床心理士は、在宅療養において長期的に自己を支えるうえで重要な存在になりうるが、神経難病への造詣をもつ臨床心理士の育成が急務である。事例として昨年度追加した高次脳機能障害では、各都道府県における高次脳機能障害支援センターおよびコーディネーターと連携しながら、面談型ピア・サポートに関する研究を行った。支援センターおよびコーディネーターの配置は支援制度上の大いなる前進ではあるが、きわめて長期におよぶ在宅療養を支えるうえでは、未開拓の部分が多く、それを突破するためにピア・サポート事業がはじめられたという位置づけが明らかになった。このように、本年度の特筆すべき成果としては、専門職支援者の配置と層の薄さがともに明らかになった点が挙げられる。今後は、専門職の参入を無条件に称揚するのではなく、あくまでもナラティヴの聞き手という観点から提言や評価を行える社会学を整えていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査は順調に進行しており、発見的な知見が導かれているため。
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今後の研究の推進方策 |
制度的な支援体制の整備の推進と、その質的な限界が複数の病い・障害について明らかになったが、これは病い・障害等の種類を問わず、またそれ以外の領域でも、昨今支援の必要性が叫ばれている領域では共通項がある可能性がある。そのため、比較に有意義と判断できれば、近年の支援制度推進(ただし専門職と素人が混合するタイプのものに限る)に関する資料収集にも手を広げたい。その一方で、本研究の根幹をなす神経難病(特にALS)の在宅療養に関して蓄積したデータの分析を進め、成果発表の準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の図書を一部延期したため。
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次年度使用額の使用計画 |
購入自体に予定変更はなく、今年度内に同じ図書の購入を行う。
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