研究課題/領域番号 |
24530621
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
土屋 雄一郎 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (70434909)
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キーワード | 環境社会学 / 環境リスク / NIMBY / 合意形成 / 放射性廃棄物 |
研究概要 |
ある特定の地域で環境リスクの受容にかかわる意思決定を社会的に図ろうとするとき、それはどのようなかたちで正当化/正統化されるのだろうか。そこでは、誰が意思決定の枠組みや原案をつくるのが望ましいと考えられ、地域社会の合意としてレジティマシーを獲得するためにはどのようなプロセスを経る必要があるのかが問われることになるだろう。そしてまた、導かれた結果に対する正当性はいかに保証されるべきか、一連のプロセスのなかで、そこに長く住んでいるという来歴やそこに住み続けたいという思い、土地に対する精神的なこだわりといった生活環境の特質にかかわる点がどの程度まで顧慮されるのかが課題となる。 本年度(第2年目)においては、こうした課題に対し(1)環境にかかわる従来の社会理論における諸研究がどのような答えを用意してきたのかを詳細なフィールドワークによって得られた知見からとらえなおすための調査をおこなった。また、(2)環境社会学におけるリスク論、環境正義論等の研究史を整理しながら、本研究が主題とする環境リスクの社会的受容をめぐる意思決定の論理がより汎用性の高い社会分析の枠組みになりうるのかを検討した。 (1)においては、主として、①震災がれきの広域処理をめぐる地域社会の対応を明らかにするために、神奈川県横須賀市O地区での調査を実施した。また、②指定廃棄物の処理にかかわる最終処分場の立地をめぐるコンフリクトの実態を社会構造的に把握するため、主として栃木、宮城両県内において実施した。(2)においては、初年度に引き続き、社会学のみならず組織論、政治学や社会工学の分野にまで視野を広げ、概念を整理しながら「負財の配分」に関わる社会的意思決定モデルの意味構造を析出するための基礎的研究に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
環境リスクの社会的受容をめぐって阻害要因であるとされてきたNIMBY(ニンビィ:Not-In-My-Backyard)という態度や考え方に焦点をあて、公共性と私権の関係とその折り合いのつけ方、負担のあり方について検討することが本研究の目的である。そのため、本研究では、(1)丁寧なフィールドワークと(2)「負財の配分」に関わる社会的意思決定モデルの意味構造を析出するための作業を車の両輪に見立て研究を進めている。 (1)においては、現在進行形の社会現象を対象にしているという制約があり、当初の計画と比べ進捗が遅れている。特に、指定廃棄物の処理にかかわる最終処分場の立地をめぐるコンフリクトの実態を把握するための調査については、複数候補地選定のプロセスとのから、本年度に計画していた調査を十分に進展させることができなかった。(2)に関しては、おおむね順調に研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
フィールドワークのための旅費、資料収集費を中心に研究費を使用したい。具体的には、放射性物質に汚染された指定廃棄物の処理にかかわる最終処分場の立地に対する地域社会の対応とコンフリクトの実態を把握するため、宮城県内および国による複数候補地の選定が進む茨城、栃木、群馬、千葉の各県での調査に係る費用として計画している。 あわせて、フィールドワークによって得られた知見を環境社会学等の研究蓄積に照らし理論的展開の糸口を見出すために、社会学、リスク論、廃棄物処理等の研究関連書籍を購入する。研究成果については、環境社会学会等での発表を予定しており、そのための費用を計上した。
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次年度の研究費の使用計画 |
指定廃棄物の処理にかかわる最終処分場の立地をめぐるコンフリクトの実態を把握するための調査については、国によって複数候補地の選定作業が進められているが、そのプロセス(進捗状況)との関係から、本年度に計画していた調査を十分に進展させることができなかったため。 放射性物質に汚染された指定廃棄物の処理にかかわる最終処分場の立地に対する地域社会の対応とコンフリクトの実態を社会構造的に把握するため、主として宮城県内および国による複数候補地の選定が進む茨城、栃木、群馬、千葉の各県での調査を実施するための旅費、資料収集費として使用する。
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