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2012 年度 実施状況報告書

芸術労働の実態と制度に関する社会学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 24530622
研究種目

基盤研究(C)

研究機関大阪大学

研究代表者

吉澤 弥生  大阪大学, 人間科学研究科, 招へい研究員 (20513162)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード芸術 / 労働 / 文化政策 / 社会運動 / アーツカウンシル
研究概要

本研究の目的は、現代芸術の創造の現場を担う人々の労働環境を、主としてインタヴュー調査によって明らかにするとともに、その結果を踏まえ現場に即した文化政策のあり方を提示することである。さらに、自己責任論で語られがちな、日本の「芸術文化」活動従事者の置かれた厳しい状況を、社会運動や社会保障に関する議論と接合させていくことも視野に入れている。
これまで平成22年度、23年度とインタヴュー集を発行してきたが、24年度は継続調査と新規対象者合わせて15名に対しインタヴューを実施した。とりわけロンドンで約2年を空けて実施した継続調査では、離職者や転職者が複数存在するなど、イギリス政権交代後の芸術文化政策の変容と、厳しさを増す現場の状況が浮き彫りになった。また並行して、文化庁、東京都、大阪府市で急速に設立準備が進みつつある芸術文化政策の専門機関「アーツカウンシル」の組織体制の分析と関係者の聞き取りを行った。モデルとなっているイギリスのアーツカウンシルについても、文献調査と、ロンドンでその従事者にインタヴューを実施した。これにより、日本各地で設立されようとしているアーツカウンシルとは異なる組織体制と事業内容、さらにそのスタッフの労働環境およびキャリア形成過程の差異が明らかとなった。これらは、26年度に制作予定であるインタヴュー集の基礎部分をなすだけでなく、とくに大阪において喫緊の課題であるアーツカウンシルという文化政策のあり方を考えるうえでも有益なデータとなると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は予想以上のスピードで国内でのアーツカウンシル設立準備が進んだため、想定していたイギリスでの調査より国内事例調査を優先したが、結果として調査報告書である3冊目のインタヴュー集制作に向けて、ほぼ予定通りの人数分のデータと関連資料を収集、分析の準備を進めることができた。

今後の研究の推進方策

引き続き、芸術文化活動従事者の労働に関するインタヴュー調査を中心に進めていく。対象者は継続と新規を合わせて20名ほどを予定し、とくにアートマネージャーなどの現場を支える若手専門家に、労働環境やキャリア形成のプロセスを重点的に聞き取る予定である。まず、東京と大阪のアーツカウンシル設立にかかわった関係者や実際に従事しているスタッフを重点的に行う。また「劇場法」施行によって大きな変化があると予想される舞台芸術の分野の従事者に対しても実施する。さらにイギリスでは、ロンドンでの継続調査に加え、アーツカウンシル・イングランドの北部地域事務所もしくはスコットランドのアーツカウンシルに赴き、インタヴュー調査、資料収集を行う。
こうしてインタヴューのデータを収集、日本とイギリスの政策の比較分析を加えたのち、26年度に調査報告書『若い芸術家たちの労働』第三号を制作し、この成果を各地に配布するとともに、招待講演や報告発表を精力的に進め、芸術と労働に関する議論の土台を作っていく。

次年度の研究費の使用計画

予定していたイギリス調査より国内事例調査を優先したため、次年度使用費が発生した。次年度以降は、国内でのインタヴューを大阪、東京、新潟、福岡、香川で実施する。またイギリスでの調査は、ロンドンと、ニューカッスルもしくはグラスゴー、エジンバラのいずれかを予定している。さらに、現代芸術、社会学、文化政策、社会運動に関する図書や映像資料も引き続き収集し分析を進める。こうした理由から、国内旅費、国外旅費と通訳謝金、図書を中心とした研究費が必要となる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 5件)

  • [雑誌論文] 「グラスルーツと文化政策 ―大阪の現代芸術をめぐるここ一〇年の省察」2012

    • 著者名/発表者名
      吉澤弥生
    • 雑誌名

      『現代思想』

      巻: 40(6) ページ: 150-159

  • [学会発表] 「都市とアート・プロジェクト」

    • 著者名/発表者名
      吉澤弥生
    • 学会等名
      「エノコジマ・クリエイティブ・カフェ」大阪府
    • 発表場所
      大阪府立江之子島文化芸術創造センター
    • 招待講演
  • [学会発表] 「記録・調査・検証にはどのような体制が必要なのか?」

    • 著者名/発表者名
      吉澤弥生
    • 学会等名
      「評価のためのリサーチの設計と実践の記録」東京都/東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京歴史文化財団)
    • 発表場所
      アーツ千代田3331(千代田区内アートセンター)
    • 招待講演
  • [学会発表] 「他の理解、異文化の理解」

    • 著者名/発表者名
      吉澤弥生
    • 学会等名
      別府現代芸術フェスティバルシンポジウム「混浴”学生”世界」BEPPU PROJECT/神戸大学
    • 発表場所
      プラットフォーム01(別府市ソルパセオ銀座商店街内オルタナティブスペース)
    • 招待講演
  • [学会発表] 「地域アートプロジェクトを批判的に検討する」

    • 著者名/発表者名
      吉澤弥生
    • 学会等名
      第三回前橋映像祭シンポジウム
    • 発表場所
      ヤーギンズ(前橋市弁天通商店街内オルタナティブスペース)
    • 招待講演
  • [学会発表] 「大阪の現状」

    • 著者名/発表者名
      吉澤弥生
    • 学会等名
      公開コロキウム「経済システムの中の芸術 -自律性神話の崩壊と他律的メカニズムの変容」
    • 発表場所
      首都大学東京秋葉原サテライトキャンパス
    • 招待講演

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公開日: 2014-07-24  

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