本研究の目的は、現代芸術の創造の現場を担う人々の労働状況を、主としてインタビュー調査によって明らかにするとともに、その結果をふまえ現実に即した文化政策のあり方を提示することである。さらに、「自己責任」論で語られやすい日本の芸術文化活動従事者の置かれた厳しい環境を、社会運動や社会政策と接続させていくことも視野に入れている。最終年度にあたる今年度は、昨年度に発行した3冊めの現場労働者へのインタビュー集『続々・若い芸術家たちの労働』の成果を、関西社会学会をはじめ各地のシンポジウムなどで報告、討論に参加した。また並行して、5名のアーティストに対するインタビューを行ない、その成果をNPO法人アートNPOリンクが受託した文化庁の委託事業「平成26年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」報告書「アートNPOデータバンク2014-15 アートNPOによるアーティスト・イン・レジデンス事業の実態調査」内に掲載した。さらに、国内で整備の進む「アーツカウンシル」のモデルとなったイギリスに赴き、地域によって異なるアーツカウンシルの事業内容の調査を実施した。3年にわたり、日本とイギリスで現場のスタッフから作家までさまざまな芸術労働者のなまの声を収集するとともに、文化政策のしくみに関する多角的な調査を実施することができた。
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