研究課題/領域番号 |
24530624
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
平井 晶子 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (30464259)
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研究分担者 |
藤井 勝 神戸大学, その他の研究科, 教授 (20165343)
山根 真理 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (20242894)
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キーワード | 家 / 家族 / 世代 / 子育て支援 |
研究概要 |
本研究は、①近世農村における家の変動仮説を新たな資料を用いて検証すること、②歴史的家の展開を踏まえ、現代の都市居住者の親族間サポートの実態と継承に関する意識との関係について家の現代的特質を明らかにすること、③近世の家研究を軸に家の現代的特性を考察し現代家族論の新しい地平を切り開くこと、以上3つを目的とする。 当該年度では、①近世の家について、山形県の戸口資料を用いた歴史人口学的分析を行い変動仮説の検証を進めること、②家の現代的特質については、名古屋地域で現地調査を実施し資料を収集すること、を中心的課題とした。概ね、予定通りに研究を進めることができ、下記のような成果がえられた。 ①家の歴史的展開については、世帯単位の歴史人口学的分析を行い、世帯の変化を解明し、19世紀中葉に東北農村で家的特質が一般化したことを明らかにした。これにより、従来の仮説(東北農村では19世紀中葉に家が確立した)が補強された。ただし、家変容のメカニズムは、従来の仮説とは異なることが想定される結果となったため、26年度以降、より詳細な個人単位の分析を進め、総合的な変動過程の解明を目指す。 ②家の現代的特質についての現地調査では、調査票調査を実施し、資料収集からデータ化までを進めることができた。子育て期の家族を対象に、父親・母親・祖父母の3者をセットとして調査票を配布し、3つのポイントから、家族生活・家族/親族関係の実態と意識、相互のサポート関係と家意識(相続・継承)へアプローチした。3者をセットとし、家族・親族関係を調査するという枠組みは、本調査の独創的な点であり、本課題を進めていく上での重要なポイントと位置づけられる。次年度以降は、これらの資料を活用し、本格的な分析・考察を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究(日本における家の歴史的展開と現状に関する実証的研究)は、家の歴史的展開に関する実証部分と、現状に関する実証部分から構成され、最終的に両者を結合させ、長期的観点から日本の家族変動論を再考することを目的としている。 平成25年度の歴史的分析では、村山地域(山形県)の歴史人口学的分析を進め、研究成果を報告することを課題に挙げていた。世帯を中心とする歴史人口学的分析がほぼ予定通り進み、研究会で報告するなど、一定の成果を上げることができた。 平成25年度の現状分析では、名古屋地域において、世代間関係中心に、祖父母による子育て支援と家の継承意識などの観点から調査票調査を実施することを中心的課題としていた。実際、9月から11月にかけて、名古屋地域で調査票調査を実施した。調査票が母親票・父親票・祖父母票という3点を1セットとする大部なものであったため、協力いただける方は限られてしまったが、それでも145ケース、回収することができた。その後、点検、整理の後、データ化まで完了することができた。
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今後の研究の推進方策 |
26年度は引き続き「家の歴史的展開」と「家の現状分析」、それぞれについての実証的研究を進めると共に、成果を学会などで報告する計画である。最終年度である27年度には、「歴史的展開」と「現状分析」を総合し、長期的視点から家族変動論を再検討するとともに、それを踏まえ、現代家族(とくに子育て)への支援のあり方についても考察したい。 26年度の具体的な方策は以下の通りである。家の歴史的展開については、国際学会などで成果を発表するとともに、個人の視点からの歴史人口学的分析を進め、変動論の一層の解明をめざす。家の現状分析については、昨年度に収集した調査票調査の資料を用いて、課題の分析・考察を進める。加えて(調査票調査の対象者の一部について)詳細なインタビュー調査を行い、より実態に即した考察をめざす。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度は、調査票を用いた定量的調査の実施に関わるものが予算の多くを占める計画となっていた。調査票調査の作業としては、調査票の作成、印刷・製本、配布・回収、回収資料の整理、データのコード化、入力作業、データのクリーニングを想定していた。調査票調査の実施に際し、回収率が正確に予測できないため、30万円前倒し申請し、少し多めの予算を確保し、回収資料が多くなった場合にもすべてデータ化し、クリーニングの作業を完了できるよう計画を立て直していた。実際には、予定していた程度の回収数となり、最大値とはならなかったことから、ほぼ前倒し申請した分を繰越することとなった。 25年度は、30万円前倒し申請し、余裕を持って調査票調査に望み、結果として30万円繰り越すこととなったため、本年度の予算はほぼ予定どおりの金額となっている。したがって、当初計画通り、ヨーロッパでの研究成果報告やインタビュー調査の実施、その資料整理に多くの予算を配分する計画である。
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