27年度は次の事例について調査をした。これらは当初設定した研究課題をより普遍化させてより広く課題をとらえるための事例である。 ひとつは従来から取り組んでいる鳥取県中部地域を中心に活動を展開している外国にルーツをもつ住民当事者とその支援者たちからなる「Toriフレンドnetwork」のネットワークのあり方、つながり方、日本語教室の機能、当事者と支援者たちとの関わり、料理教室などのイベントへの参加の効用などについて調査した。これはいわゆる「ニューカマー」と呼ばれる外国人住民である。 もうひとつの事例としては、地域における「オールドカマー」としての在日朝鮮人の地域における表現について調べた。 そしてもうひとつの外国人非集住地域における事例としては、鳥取市東部のムスリムのコミュニティを取り上げた。これは必ずしも国籍で区分される「外国人」のカテゴリーには納まらず、多国籍のコミュニティであるが、外国人非集住地域で少しずつ増加し続けている新しい「エスニック・マイノリティ」のコミュニティとして位置づけられよう。鳥取市には2014年からモスクが開設され、そこが地域のムスリムたちの活動の中心となっている。ところが、ムスリムたちのモスク開設計画は、当該地域の住民には事前に十分に知らされておらず、相互理解がなされないままの「見切り発車」となっている。このような状況下、文化や宗教面において「異質な他者」を受け入れてこなかった当該地域と地域のムスリム住民たちはどのような関係性を築いていくことができるのか/できないのか、そして地域にムスリム住民が暮らすことやモスクが開設されることの可能性と課題を調査した。 主にこれらふたつの事例から、棟研究課題「地域における包摂型コミュニティ構築の可能性と課題――外国人非集住地域に着目して」を考察した。
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