1. 2011年アンケート調査の自由記述回答では、「研究内容に責任を持つことができる人が論文の著者になるべき」という考えが最も多かったが、厳密な著者基準を設定すること自体に違和感を表明する記述も少なくなく、「研究環境の整備をした人」や「研究費を確保した人」などの役割の重視、研究における教育的側面などの考え方がみられた。
2. 60-70年代に講座制の弊害がさかんに指摘され、「民主化」が目指されたが、そこでも自然科学系の実情(研究スタイルや講座運営の実情)をふまえた議論は、あまり多くは展開されていないことが文献サーベイによりわかった。
3. 2011年の調査の回答者のうち、期間内に34人の対象者に対するインタビュー調査を実施した。今後もインタビューを継続予定であり、内容の分析は現在、作業の途中であるが、少なくとも、次のようなことが、明らかになっていくと見込まれる。 【オーサーシップ】ほとんどの回答者が「研究に関わっている人だけが、著者となるべき」という考え方を持っていた。しかし同時に「研究に関わっていて、著者となるべき人」とされるの範囲については、ICMJE定義外の人が含まれている場合も少なくなかった。 【研究組織】いわゆる小講座制の研究組織を、全学に対する部局の自治・部局内の運営に関する権力構造・講座内の権力の三つのレベルから、訊ねた。部局内の運営に関しては、教授のみが明確に権限を占有しているところと、そうではないところに分かれていた。研究室内の教員間の権力についても、極端な教授支配型はそれほど多数ではなく、予算や研究テーマについて、教員間での一定の自律性が存在しているところも見受けられた。
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