研究課題/領域番号 |
24530631
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
吉田 誠 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (90275016)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 労使関係 / 経営権 / 日産自動車 / 自動車産業 / 労働組合 |
研究概要 |
日産における臨時工導入をめぐる労使の状況を確認するために、労使協定および当時の労組機関紙の分析を進めた。そのなかで、臨時工登場以前の日産従業員の配置転換をめぐる規制が一つ重要な論点として出てきた。すなわち、経営側が従業員の配置転換という"経営権"を有していたかどうかという点である。臨時工の導入が戦後の新規事業にあたる米軍車輌の再生作業という点にあることが確認されたので、従来の従業員(すなわち組合員)のこの作業への配転が難しかったかどうかが一つの論点になるために、その確認にあたった。 その中で明らかになった事実は、戦後の経営危機にあたって当初組合側が配置転換の実施について積極的に実施することを経営側に求めていたこと、そしてそれに呼応する形で経営側もその「強行」をうちだしたことである。しかしながら、その後、組合の方針は積極的な配置転換支持と配置転換に慎重な姿勢とに割れる。後者は、当時の交通インフラや住宅事情から、配置転換は解雇に等しい不利益を伴うとする考えかたが、組合の下から出てくる。そのため、現場においては配置転換をめぐって労使の紛争が起こることになった。組合執行部としても下からの要求に応える形で、配置転換については慎重な姿勢をとるようになる。 本研究における24年度の研究の意義は、臨時工の導入にあたって経営側は配置転換規制を組合から受けていたということであり、既に確認しているような採用規制まで含めると、従業員の採用にあたって労働協約の枠組みから外れた労働者を求めていたということになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨時工の登場以前の労使関係を検討するとともに、必要な資料等の入手につとめることができたので「おおむね順調に進展している」と評価した。研究課題の点からすれば、臨時工が登場するにあたって経営側の問題となっていた労働組合の規制の実像を明らかにすることで、なぜ臨時工が導入されることになったかを明らかにする手掛かりをつかむことができ、順調かつ着実に当初の研究計画を遂行することができていると判断しうる。資料収集の点においても、労働政策・研究研修機構において集められている清水慎三文庫に全日本自動車産業労働組合関係の一次資料が残っていることが明らかになるとともに、本研究において中心的な資料となっている浜賀コレクションの収集者である元日産従業員の故浜賀知彦氏の日記を入手することができた。戦後直後から記されている浜賀氏の日記は当時の労働者の実情をかいまみることのできる非常に貴重な資料であり、本研究において大きな研究の進捗が可能とするものである。また浜賀コレクションについて御遺族の方との協議をすすめ、今後の寄贈先が東京大学経済学部資料室に決めることができ、資料の公開に努めるとした課題も果すことができたことは今年度の大きな成果であったといってもよい。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、資料の収集、電子化、および資料の分析を進めることにする。特に25年度については1950年の日産における人員整理以前の臨時工の導入を中心に、当時の非正規雇用の導入およびそれに伴う労使関係の論点について整理をしていく予定である。また、50年以降についても資料収集を積極的に進めるなかで、分析を開始することとする。資料収集については労働政策・研究研修機構が所蔵する清水慎三文庫等の未入手資料について中心的にあつめることとする。また東京大学経済学部資料室に寄贈された浜賀コレクションについて複写などで遺漏がないかを確認し、リスト作成の協力を行う。入手した資料については順次電子化をすすめ、可能なものについてはホームページで成果公開していくことにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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