研究課題/領域番号 |
24530633
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小川 玲子 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (30432884)
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研究分担者 |
平野 裕子(小原裕子) 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50294989)
大野 俊 清泉女子大学, 文学部, 教授 (10448409)
坪田 邦夫 明治大学, 農学部, 教授 (40432885)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 移民 / 介護労働 / 台湾 / 韓国 / フィリピン / インドネシア |
研究概要 |
本研究は移民研究と社会福祉研究という2つの領域の学際的な研究であり、2つの政策の結節点に移民ケア労働者を位置付け、制度やスキルや言説を明らかにすることが目的である。初年度の今年は、5月にオックスフォード大学で行われた社会政策分野の研究者によるFamily at Risk 国際会議で始まり、ケアを考える際に重要な家族という空間に関する理解を深めることが出来た。同会議ではエスピン・アンデルセンの福祉レジーム論に修正を加え、福祉国家の類型によってどのように労働力を確保しているかという報告もあり、大変刺激を受けた。同会議での報告に修正を加えた論文は、査読を経て出版される予定である。 9月には移民政策の日韓比較に関する神戸大学でのシンポジウムで、「日韓のケアワークと移民」と題する論文を執筆し報告を行った。日韓の移民政策は民族的な絆を重視しているという点で共通しているが、「脱民族化」と「再民族化」、「脱家族化」と「再家族化」という2つのベクトルでケア労働における移民の再配置を分析すると、全く異なった結果が得られることが明らかになった。 11月にはアジア・太平洋アクティヴエイジング会議で共同研究者らとパネル報告を行った。EPAによる受入れの経験から何が学べるのか、看護・介護の制度やスキルの国際比較、経済合理性と制度の持続可能性、定住のための問題点について最新の調査の報告と討論を行った。以上の国際会議の他にも、マドリッドやクアラルンプール、ハワイ、東京などの国際学会で報告や討議を行った。 調査は共同研究者と共に2012年9月と2013年2月に台湾でフィールドワークを行い、移民ケア労働者に関わる政府、介護施設、斡旋業者、NGO、移民などにインタビューを行った他、台湾国立大学の図書館等で文献収集を行った。その成果の一部は2013年6月に香港で開催される国際会議で報告される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2012年度は国際学会における報告と調査が順調に進展した。特にオックスフォードでは移民研究やインドネシア研究を行っている研究者と議論を行うことが出来、今後の研究の糧とすることができた。調査に関しては、今年度は2回にわたる台湾調査によって、良い人脈とデータの収集が出来たが、同時に台湾の福祉制度に関するさらなる調査が必要だと感じている。 また、9月に行われた日韓の移民政策の比較のシンポジウムの経験から、韓国については同じ分析枠組みでの比較が難しいのではないかと考え始めている。なぜならば、日本と台湾に関しては明確な政策的意図により移民ケア労働者が流入しているため、制度の評価を含めた比較を行うことが可能であるが、韓国は在外同胞の訪問就業制により就労制限がない形で朝鮮族がケア労働に就労しているケースが多く、統計的にも把握が困難である。 さらに、韓国の移民研究は雇用許可制による生産労働者と国際結婚の花嫁が中心であり、神戸大学のシンポジウムで韓国側の移民研究者に朝鮮族女性の研究を行っている研究者を知っているかと尋ねたが、知らないとのことであった。もしかしたら、移民研究者ではなく、社会福祉の研究者をあたった方が良いのかもしれない。 上記のような理由により、当初の計画では3カ国を同じ枠組みで比較する予定であったが、研究方法論を多少変更せざる終えないのではないかと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はまず台湾調査の中間報告を香港の国際学会で報告し、コメントを得る予定である。また、6月に釜山で開催されるエイジングに関する国際シンポジウムにも招待されており、報告を行う予定である。 調査については、台湾での調査を継続すると共に、韓国調査の足がかりを作りたいと考えている。2月に台湾で収集した資料の読み込みを進めると同時に、夏の調査では移民を含めた関係者のインタビューを継続すると同時に、日本と比較可能なデータを収集する打ち合わせが出来ればと考えている。また、日本においても合格者がいる施設を中心にフォローアップ調査を行いたいと考えている。 共同研究者とも共著論文を発表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
台湾、韓国等への調査費及び国際学会に参加するための旅費と資料収集・文献購入のために使用する予定である。SPSSのソフトがやや古いのでバージョンアップするかもしれない。
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