交付申請書に示したとおり、本研究はここまで2つの軸、①「旧蔵資料に直接あたりデータを整備する調査研究」と、②「萬年社と大阪が広告史上果たした役割を俯瞰的に探求する研究」(以下大阪の広告史研究)を持って進めてきた。前年3年目までで①、すなわち大型古資料と社史資料の全容把握とデータベースの整備は、スナップ写真データの整理を含め全件完了し、WEB上への目録公開を果たした。最終年度である本年は、旧蔵資料の保存をより安定化するための整理作業を実施しつつ、②の大阪の広告史研究を次のステップ、すなわちこの調査成果を元とした黎明期大阪の広告史についての研究調査を、最終的には出版を目指した成果とすべく進展させた。 具体的にはまず年度初めの4月11日に萬年社コレクション調査研究プロジェクト報告会として本研究の①にかかる実施報告ならびに②についての研究進展の報告の場を設けた(一般公開形式)。これはメディアでも開催が取り上げられ盛会となり、研究成果公開の場として意味のあるものとなった。続いて研究協力者と研究者、大学院生およそ10名で組織した萬年社と大阪の広告史の探究を目的とした研究会を7月10日、9月18日、11月13日、1月29日、3月25日の計5回開催した。 この研究会は2016年度も5月と7月に継続する。そしてこれらの成果を総括し2017年に出版を目指したい。ここまでに行ってきた学会などへの成果発表に加え、成果出版という最終形が、本研究計画の当初の目的、すなわち「萬年社が蒐集した広告資料群や、企業内部資料群を調査・整理、データベース化し、それが制作された時代背景と合わせてみるという独自のアプローチによる、大阪という都市を足場とした広告史探究」を実現するものと考えている。
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