研究課題/領域番号 |
24530644
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研究機関 | 北海学園大学 |
研究代表者 |
本田 宏 北海学園大学, 法学部, 教授 (60316239)
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研究分担者 |
水溜 真由美 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (00344531)
川村 雅則 北海学園大学, 経済学部, 准教授 (40364228)
越田 清和 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (40626488)
清末 愛砂 室蘭工業大学, 工学研究科, 准教授 (00432427)
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キーワード | 社会運動 / 原発問題 / 労働組合 |
研究概要 |
本田は、5月に歴史学研究会(一橋大学)で戦後日本政治と反原発運動について報告し、成果を10月の学会誌に刊行した。9月には、日本政治学会(北海学園大学)、NPO法人札幌自由学校「遊」の連続講座、および環境経済政策学会(神戸大学)にて、ドイツの原子力をめぐる政治過程における政策対話について報告し、成果を2014年2月の北大の紀要に発表した。8月には原子力問題に対する欧米の労働組合の態度について雑誌論文を発表した。これらの活動を総合する形で、本田を共同編者とする『脱原発の比較政治学』と題する教科書の執筆・編集作業を年度後半に集中して行った。 清末は、11月に上関原発の建設反対運動を展開している祝島(山口県上関町)の住民運動関係者への聞き取りを行ったほか、同月に日本平和学会秋季研究集会で放射線被曝や放射性廃棄物の問題に関する情報収集を行った。2月に開いた講演会では、祝島での聞き取り調査の報告を行うとともに、福島原発事故の被災者が抱える問題や「原発事故子ども・被災者支援法」に詳しい関係者を札幌から招聘した。3月には室蘭工業大学およびラップランド大学アークティックセンター主催のセミナー(ロバニエミ)にて、日本の差部構造の中の住民運動の課題を示すために、日本のフェミニスト運動とアイヌ女性との関係に関する研究報告を行った。 水溜は11月、北海道大学人文・社会科学総合教育研究棟にて、ドキュメンタリー映画『ショック・ドクトリン』の上映会を開催するとともに、千葉大学の三宅芳夫氏に講演していただいた。また原爆投下を行ったアメリカ人パイロットを主人公とする堀田善衛の長編小説『審判』について学会発表を行った。 川村は、官製ワーキングプア問題のうち非正規公務員問題について、地方都市で調査をしたほか、総務省資料を分析した。また札幌市を中心に公契約条例の制定運動に関する情報・資料を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4つの研究目的のうち、①社会運動の影響力を規定する政治構造の歴史的・比較政治学的分析については、本田が日本とドイツの原子力をめぐる政治過程に関して学会発表と雑誌論文執筆を重ね、それらを総合する形で4月に『脱原発の比較政治学』として刊行するところまできた。②先住民族居住地域を含むアジアの原発問題やグローバルな差別構造、原発輸出問題については、調査を進めていた分担者、越田の死去によって、課題の再検討を余儀なくされたが、新たな研究分担者として清末が日本国内の上関原発計画をめぐる祝島の住民運動に焦点を当てることによって、元々の視点を継承することが可能になった。③原発問題が労働運動に及ぼす影響や、地域労働組合・社会運動的労働運動についての調査のうち、まず前者については、日本や欧米五カ国の労働組合と原発問題に関する本田の学会発表・論文執筆によって、かなりの水準まで達成できた。また後者については川村が、非正規公務員問題の情報収集と、札幌市の公契約条例の情報収集をおおむね終了した。④原発問題をめぐる価値観の対立や、原子力などの問題とフェミニズムの運動・思想との関係については、水溜が、1950年代から1960年代までの核兵器をめぐる言説と核兵器を主題とした文学作品についての検討を完了し、近く、『北海道大学文学研究科紀要』(2014年6月発行予定)に論文として発表する予定である。全体として、おおむね順調に研究は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本田は、原発問題をめぐる政策対話や労働組合についての比較政治学的理論の構築に傾注するとともに、近年の日本における動向、特に原発問題の当事者(自治体や避難者、被害者、事故の責任者)の線引きをめぐる議論や政治過程を民主主義論や公害問題、チェルノブイリ原発事故と関連づける形で研究を進める。 清末は、福島原発事故以降のさまざまな社会政治情勢の動きとあわせて、原発への反対運動や被曝労働問題を日本国憲法の平和的生存権、および国際法等の安全保障とジェンダーの枠組から再検討するための研究を進める。 水溜は、1950年代後半以降、日本の文学者が取り組んだアジア・アフリカ作家会議の活動について、堀田善衛を中心に検討する。 川村は、自治体の業務委託など、もう一つの官製ワーキングプア問題の把握と、これらの問題改善に取り組んでいる労働組合の事例分析を進める。また、公契約条例がすでに制定された自治体(2014年4月時点で11自治体)からの情報収集を行う。 各分担者は分担課題を追求し、逐次研究発表・論文執筆、及び市民向け講演会を行うが、各分担課題のポテンシャルはかなり拡大してきたので、本として刊行できる機会が生じた場合には随時、分担者の判断で進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
特に研究代表者が、多数の招待講演と雑誌論文執筆、および編著の執筆・編集に忙殺されたため、資料収集などのための調査旅費の支出が抑制されたためである。 特に研究代表者は、成果発表としての編著書の慣行が実現し、招待講演や雑誌論文執筆もひと段落したので、調査旅費の使用をスピードアップしていく。
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