研究課題/領域番号 |
24530645
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 仙台白百合女子大学 |
研究代表者 |
高橋 早苗 仙台白百合女子大学, 人間学部, 准教授 (90285685)
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研究分担者 |
石沢 真貴 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (20321995)
今野 健一 山形大学, 人文学部, 教授 (70272086)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 生活再建 / 社会学 / 地域コミュニティ |
研究概要 |
本研究は、東日本大震災(特に津波被災者)によって大きな問題に直面する被災者に焦点をあて、異なる地域性を有する2つの都市(岩手県釜石市と宮城県多賀城市)を調査対象者に選び、継続的インタビュー調査を通じて、個々の被災者が生活を再建し、地域社会に位置づくプロセスを明らかにすることを目的とした。 研究1年目の平成24年度は、当初の予定通り、3つの調査を並行して実施したが、特に「A釜石調査」を先行的に実施した。釜石インタビュー調査は、研究代表者の高橋と分担者の今野が担当した。まず、調査対象地である岩手県釜石市に赴き、今後の本格的な調査に向けて、復興状況の確認と、仮設住宅の立地場所の確認を行った。さらに、釜石と市域を接している大槌町、さらに北部に位置する山田町の復興状況の確認と資料収集を行った。 釜石市の津波被災者については、複数名のインタビュー調査を開始しており、仮設住宅の役員を務める方、仮設住宅にお住まいの方、新たに自宅を再建された方、勤め先が被災した方などにお話を伺った。 平成24年度は「A釜石調査」に時間を割いて実施したため、「B多賀城調査」については、現地視察と資料収集を中心に行った。 「C学生に対するアンケート調査」は、高橋が中心となって調査票の原案を作成し、研究会を実施して調査計画を確定した。所属する3大学(仙台白百合女子大学、山形大学、秋田大学)で調査票を配布し、250人以上の回答を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度当初の計画では、「A釜石調査」、「B多賀城調査」、「C学生アンケート調査」の3つの調査を並行的に実施することにしていた。だが、実際に研究に着手したところ、調査協力者との日程調整や、研究代表者の研究従事時間の配分などを考慮し、「A釜石調査」を先行的に実施することにした。「B多賀城調査」は、平成25年度以降に取り組むものの、3年という研究期間のなかで、「A釜石調査」にいっそう力点を置く必要があると感じている。 優先的に取り組んだ「A釜石調査」については、計画通り順調に進んでいる。本研究の特徴でもある継続的インタビューにより、数ヶ月間隔でインタビュー対象者(調査協力者)にお会いするなかで、生活再建に向けた被災者の行動や意識の変化をその都度確認することができている。 「B多賀城調査」は、被災者のインタビュー調査に着手しなかった。被災地域の地理的・地域的特性を考え、今後は支援団体や事業所の調査に重点をおく必要があると考えている。 「C学生アンケート調査」では、研究代表者・分担者の所属する3つの大学で、1年生を中心に調査票調査を実施した。単に数量的に処理するよりも、率直な意見を寄せてもらうことを重視し、自由記述欄を設けたところ、多くの意見が寄せられている。東北地方にある大学として、震災復興に関する学生の意見を把握するだけでなく、そうした意見を今後の大学教育に活かすことができる点で、大きな成果となるであろう。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として、引き続き「A釜石調査」、「B多賀城調査」、「C大学生調査」の3つの調査を実施する。ただし、「B多賀城調査」については、被災者個人のインタビュー調査にのみ焦点をあてるのではなく、「地域調査」の側面を重視し、事業所の復興状況に関する実態把握や、多賀城市の復興計画の具体化に伴う空間編成に着目して調査を実施していきたいと考えている。 「A釜石調査」については、現時点でインタビューに協力していただいている人々に対して、継続的(年に1~2回)なインタビューを実施していく。さらに、インタビューにご協力いただいた方が居住する地域の住民組織の運営や、居住区の空間的変容に伴う日常生活の変化についても調査を進めることで、本研究の質を高め、包括的な調査研究をめざしていく。 「C大学生調査」についても、継続して調査票調査を実施する。平成24年度の調査対象者と重複しないよう配慮しつつ、それぞれの大学で100名以上の回答が得られるよう計画的に実施していきたい。次年度は、本年度に実施したアンケート分と、次年度に実施予定のアンケート分をあわせて集計し、分析をすすめたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度からの繰越として次年度に使用する予定の研究費は約14万円である。平成25年度の当初の予定額(30万円)と合わせて、次年度は約44万円の研究費を予定している。 まず、本年度の繰越金14万円のうち10万円については、研究代表者が当初に予定したノート型パソコンの購入を次年度に変更したため、生じたものである。したがって次年度は、調査研究に用いるノート型パソコンを購入(ソフトを含む)する予定であり、次年度の予算の一部と合算して、18万円程度の物品を購入予定である(「物品費」)。研究分担者の繰越として約4万円は、平成25年度の「B多賀城調査」および研究会への参加費用(「旅費」)に上乗せする。 その他、平成25年度の研究費の使用計画として、文献・図書の購入など「物品費」に約6万円、仙台での研究会および調査のための出張費として「旅費」に11万円、データ入力の補助の「人件費・謝金」として3万円、釜石調査に使用するレンタカー代など「その他」として6万円を使用予定である。
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